「スカボローの王と言いたいのだろう」南シナ海で中国の実効支配強まる中、日本とフィリピンが協力深化
南シナ海で中国実効支配、日本とフィリピン協力深化

フィリピンのマルコス大統領が26日、国賓として来日した。太平洋戦争での旧日本軍の占領を経て、国交が正常化してから7月で70年となる。来日を機に両国関係はさらに強化される見通しで、フィリピンは日本が4月に解禁した武器輸出先の第1号としても候補に挙がっている。接近の背景にある現状や、歴史的な経緯をひもとく。

スカボロー礁の現状

フィリピンの首都マニラから車で5時間。ルソン島中部のパンガシナン州インファンタに、南シナ海に面した漁村がある。今月21日午前6時すぎ、海から戻った漁師たちが酒を飲みながらくつろいでいた。一見して穏やかな時間を過ごす彼らだが、フィリピンと中国の争いが生活に暗い影を落とす。

インファンタから西に200キロほど沖合の「スカボロー礁(中国名・黄岩島)」。フィリピンの排他的経済水域(EEZ)に位置する好漁場だが、中国が領有権を主張し、2012年から実効支配を続けている。海域では中国海警局などの船によるフィリピン船への放水や航行妨害が相次ぐ。

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漁師のダニー・マンリギスさん(54)は約2年前に漁で近づき、高圧の放水を受けた。「彼ら(中国)は、自分たちがスカボローの王だと言いたいのだろう」。船体の損傷やけがを負いかねない行為に身の危険を感じ、礁付近に行くことはなくなったという。ノエル・バロカンさん(53)も海域で中国船から高圧の放水を受け、高速船に追われた。「本当はたくさんの魚が捕れる場所なんだが」と言うが、今は行くのをやめている。近場の漁場は水揚げが少なく、収入は減った。

日本とフィリピンの協力強化

南シナ海では近年、領有権を巡り中国との対立が先鋭化している。フィリピンは対抗するため、急速に日本との協力関係を深める。中国の海洋進出を警戒する日本にとって、フィリピンはシーレーン(海上交通路)の要衝に位置する重要な同志国だ。これまで、沿岸監視レーダーを供与するなどしてきた。今年4月には殺傷能力のある武器の輸出を解禁し、海上自衛隊の護衛艦輸出も検討する。

来日にあたり本紙など日本メディアの取材に応じたマルコス大統領は「両国の関係は新たな段階に入った。継続的な強化と深化がもたらされるだろう」と話した。関係強化をインファンタの漁師たちも歓迎する。バロカンさんは「私たちを守って、安全に漁を続けられるようにしてほしい」と求める。「政治的なことは分からない。だが、スカボローは私たちのものだ」と力を込めた。

専門家の見解

「フィリピンは中国が覇権を狙う熱気を肌で感じている。これは生存をかけた戦いだ。自国の防衛のために日本の支援を歓迎しており、おかげでフィリピン沿岸警備隊の能力は飛躍的に向上した」。日比安全保障が専門のアナリスト、ホセ・カストディオ氏は、連携のメリットを説明する。

一方、日本では平和主義の理念から他国と軍事面で関係を強化することに慎重な声が根強い。カストディオ氏は「右翼的な軍国主義の再来を阻止する『良心』としての動きでもある」と理解を示しつつ、こう続けた。「もし中国の軍艦が尖閣諸島や沖縄を脅かす光景を目の当たりにすれば、反対の姿勢を考え直すかもしれない」

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