世界的なブームにより、米国や欧州、アジア各国で通じる名詞となったMatcha(抹茶)。最近は茶どころの西尾市や京都・宇治などで生産される上質な抹茶の人気が高まり、海外ではラテで味わうのが主流という。西尾担当の記者は今月、人気が定着した国の一つ、オーストラリア西海岸最大の都市パースを訪問。街を歩くと、独自の進化を遂げた多彩な抹茶を見つけた。
バラック広場で出会った抹茶トレーラー
快晴の青空の下、川岸近くの広場にジュースやコーヒー、サンドイッチの露店が並ぶ。5月10日、パース中心部のバラック広場で日曜午前に開かれるマーケットを訪ねると、地元住民や観光客でにぎわっていた。南半球の同国は秋が深まる季節。人々は芝生に寝転がったり、体操をしたり、ベンチで談笑したり。広場に抹茶を扱うトレーラー形の店舗もあり、カウンターで「何がおすすめ?」と尋ねる買い物客に、女性店員が「シーブリーズ・ラテ」と朗らかに応対した。店先の看板を読むと、抹茶にミルク、メープルシロップ、塩を加えた飲み物という。
「シーブリーズ・ラテ」の秘密
別の男性店員が缶から抹茶の粉をスプーンですくって茶わんに入れ、お湯を注いで茶せんでかき混ぜる。記者もラテを注文し、「この抹茶は日本産?」と尋ねると「もちろん。セレモニアルグレードよ」と女性店員はにっこり。セレモニアルグレードとは、茶道でも使われる等級の高い抹茶を指す。もしや西尾の抹茶かと期待を胸に産地を尋ねると、女性は缶の表記を見ながら「えっと…UJI(宇治)!」と答えた。
店を経営するリアムさん(30)は、西尾を知っているかと記者が聞くと、「知っているよ。いつか行ってみたい」と答えた。日本には抹茶の買い付けでたびたび訪れるという。聞くと、パースで店を始めたのが2年前。その前に英ロンドンで暮らした経験があり、既に同国で人気だった抹茶と出合ったそうだ。「この魅力を自分の街でも伝えたいと思ったんだよ」
抹茶ブームの背景とパースの現状
近年、抹茶は健康に良い飲料として各国で人気が高まり、特に2024年から高級な抹茶の需要が急増。交流サイト(SNS)で影響力のある訪日客が、京都の老舗店で購入した抹茶でラテを作る動画を投稿したことがきっかけとされる。パース近郊の港町にある日本雑貨店では、「抹茶」の掛け軸が掲げられていた。
抹茶ラテを定番メニューに掲げるコーヒーチェーンのスターバックスが市街地にないパースでも近年、抹茶を扱う地元のカフェが増えたという。イチゴやマンゴー、ココナツミルク味の抹茶飲料のほか、抹茶と同じ緑色のピスタチオクリームを組み合わせた「ピスタチオ抹茶」を出す店も。茶専門店をのぞくと、1缶20グラム入り25・5豪ドル(約2900円)の「Aichi(愛知)」銘柄の抹茶が商品棚にあり、「豊かな土壌、穏やかな気候、数百年もの茶栽培の歴史がある地域」との英文が記されていた。
パイオニアの思い
「僕が店を始めた頃はそれほどだったけど、今は抹茶の店がたくさんある。コーヒーと同じくらいポピュラー」とリアムさん。あなたはこの街での抹茶のパイオニア(先駆者)だとたたえると「そう思いたいね」と照れくさそうに笑った。
インド洋につながるスワン川のほとりでシーブリーズ・ラテを味わった。抹茶の風味とミルク、メープルの甘みが合わさったマイルドな味わい。パース発の「メープル抹茶」を日本で紹介する。リアムさんに約束し、マーケットを後にした。



