ホルムズ危機で肥料高騰、タイのコメ農家直撃 日本への輸出にも影響か
ホルムズ危機で肥料高騰、タイのコメ農家直撃 日本輸出にも影響

現場からホルムズ危機で肥料高騰、タイのコメ農家直撃 日本への輸出に影響も

2026年5月15日 6時00分有料記事

タイ中部パトゥムタニ県=伊藤弘毅

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混乱が続く中東情勢が、世界有数のコメ輸出国タイに影を落としている。ホルムズ海峡を船が通れず、中東産の輸入肥料が高騰しているためだ。農家の経営が圧迫され、肥料の使用量を抑えることで収穫量の減少も危惧される。包装や輸送にかかる費用も上昇し、日本を含めた輸出先にも価格が上昇するなどの悪影響が及ぶ恐れもある。

ホルムズ海峡閉鎖で肥料が不足

アジアなど食料価格の上昇に懸念が広がる中、タイの首都バンコクから車で約1時間。中部パトゥムタニ県の農村部には、長方形の水田が延々と広がる。暑季の5月は田植えの季節で、農家が土を掘り返したり、田んぼに水をはったりしていた。

しかし、除草作業をしていたコメ農家のスウィット・チャンプラサートさん(71)の表情はさえない。「半世紀以上コメ作りをしてきたが、こんな危機的状況は初めてだ」と語る。

化学肥料の一大産地

サッカーコート5面ほどに相当する面積の水田を管理するスウィットさんは、例年であれば田植え前に化学肥料を散布する。しかし、今年は肥料価格が昨年の2倍以上に高騰。そのため、使用量を半分に減らさざるを得なかった。「収穫量が3割以上減るかもしれない」と不安を漏らす。

タイは世界第2位のコメ輸出国であり、日本も年間約10万トンを輸入している。タイ産コメは高級品として知られ、日本では主に業務用や一部の家庭用として流通している。肥料高騰による収穫量減少は、日本への供給量減少や価格上昇につながる可能性がある。

農家の経営を直撃

タイ政府は肥料価格の高騰を受け、補助金の支給を検討しているが、農家の間では「遅すぎる」との声が上がる。また、肥料以外にも、包装資材や輸送費の上昇が重なり、コメの生産コストは全体的に上昇している。

タイ中部ペチャブリ県では、日本に輸出するコメの検査作業が行われているが、検査員も「価格転嫁が避けられないだろう」と話す。日本側の輸入業者は「既に値上げの打診を受けている」と明かし、消費者への影響が懸念される。

ホルムズ海峡の封鎖は、イランと米国の対立激化に端を発する。海峡は世界の原油輸送の約3割が通過する重要拠点であり、その閉鎖はエネルギー市場だけでなく、肥料や食料のサプライチェーンにも深刻な影響を及ぼしている。

今後の見通し

専門家は「ホルムズ危機が長期化すれば、タイだけでなくアジア全体の食料安全保障が脅かされる」と警告する。タイ政府は肥料の代替調達先を模索しているが、中東産の化学肥料に依存する体質は簡単には変えられない。

一方、日本政府はタイからのコメ輸入安定化に向け、備蓄米の放出や他国からの調達を検討している。しかし、世界的な食料価格の高騰が続く中、即効性のある対策は難しい。

スウィットさんは「今年の収穫がどうなるか、神のみぞ知る」と苦笑いしながら、田んぼに向かった。タイのコメ農家を襲う危機は、遠く日本の食卓にも影響を及ぼしつつある。

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