静岡の風土をジンに閉じ込める科学的手法
豊かな自然に恵まれた静岡県の食材と合う酒を開発したい――。そんな思いから、静岡大学の研究者や地元農家ら8名が2022年に設立したベンチャー企業「Aoi Gin Craft Technology」(AGCT)が、県産素材を活かしたクラフトジンの製造で注目を集めています。
科学に基づく酒造りへの挑戦
取締役を務める静岡大学術院農学領域准教授の一家崇志さん(45)は、植物栄養学を専門とし、植物の生育環境とストレス耐性の関係性などを研究しています。酒造りの経験が全くないメンバーたちが選んだ道は、科学的手法に基づいた醸造でした。
「食材の魅力を遺伝子レベルで突き詰め、静岡の魅力が詰まった唯一無二のジンを造りたい」と一家さんは語ります。
県産ボタニカルで「静岡の香り」を表現
AGCTのジンの最大の特徴は、風味や香りを決める植物由来の原材料「ボタニカル」に県産のサンショウやかんきつ類を使用している点です。香り成分を科学的に解析し、データに基づいた酒造りを行うことで、「静岡の香り」をジンに吹き込んでいます。
現在は5種類の商品を展開しており、静岡の海鮮やウナギなどの料理に合わせて楽しめるよう、食事を邪魔しない繊細な香りに仕上げられています。
高度な蒸留技術と今後の展望
製造工程では、2種類の蒸留機を駆使しています。減圧蒸留機はタンク内の圧力を下げて沸点を引き下げ、低温で素材本来の香りや味わいを丁寧に引き出します。もう一方のオランダ製電気式蒸留機は温度管理が可能で、素材ごとに最適な蒸留を行っています。
今後の計画としては、ワサビや茶など静岡を代表する農産物の使用を検討しているほか、農園と工場見学をセットにしたツアーの実施も予定されています。
「オール静岡」を目指す挑戦
さらなる挑戦として、AGCTではジンのボタニカルとして代表的なジュニパーベリーの試験栽培を静岡大学近くで開始しました。現在はほとんどが海外からの輸入に頼っていますが、「オール静岡のクラフトジン」を目指すためです。
将来的には耕作放棄地となっている茶園の活用など、地域の社会課題解決にも取り組んでいきたいと考えています。
DNAに込められた想い
社名の頭文字「AGCT」は、DNAを構成する四つの塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)と同じです。商品ロゴもDNAの二重らせん構造をイメージしてデザインされており、科学的アプローチへのこだわりが随所に表れています。
販売情報と所在地
事務所は静岡大学内のプロジェクト実験室に、工場は静岡市葵区の料亭「浮月楼」内に設けられています。県内の飲食店で提供されているほか、静岡大学生協などで販売されており、200ミリ・リットル(税込み2400~2800円)と500ミリ・リットル(同3600~4300円)の2サイズが用意されています。



