江戸時代の両替商が説く借金論、現代の財政に響く「大計」の重要性
江戸両替商の借金論、現代財政に響く「大計」の重要性

江戸時代の両替商が現代に問いかける借金と経済の本質

江戸時代中期、大坂で両替商を営んでいた草間直方は、優れた経済学者としても知られる人物であった。彼の著作『三貨図彙』は、古代から江戸期に至る貨幣制度の変遷を詳細に記した日本初の貨幣史であり、後年に明治政府が編纂した『大日本貨幣史』にも参考にされたと伝えられている。

借金を「天下金銀の融通」と捉えた先駆的な視点

この大著の中で、直方は金銭の貸し借りを生業とする両替商らしく、借金について独自の見解を展開している。彼は次のように論じた。「借財は天下金銀の融通であるから、大きな借金だからといって心配するには足らない。経済は借金を国家再興に用いるか、死物にするかにかかっている。大計がなくては大きな業績をおさめることは困難である」(新保博『寛政のビジネス・エリート』PHP研究所、一部略)。

直方は経済の発展には資金の循環が不可欠であると考え、借金を単なる負債ではなく、経済活動を活性化する手段として肯定的に評価した。同時に、安易に借金に依存する諸大名に対しては警鐘を鳴らすことも忘れなかった。この借金論から窺えるマクロ経済的な視座は、学問的研究と実践的な商いという二つの活動を通じて培われたものだろう。

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現代の財政状況と「大計」の必要性

昨年末、我が国の借金は1340兆円を突破した。これは国内総生産の2.3倍に達し、先進7か国の中で最悪の水準である。この数字を聞けば、誰しもが憂慮せざるを得ない。高市首相は「責任ある積極財政」を掲げ、消費税の減税政策を推進している。まさに、直方が指摘した「大計」が問われる局面である。

草間直方は195年前、傘寿を目前にしてこの世を去った。遠い鎖国の時代に生きた市井の学者の論考が、現代の経済政策にまで響き渡ることに驚きを禁じ得ない。研究と実務を両立させた彼の視点は、今日の財政議論に貴重な示唆を与え続けている。

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