福島大熊町で育つソルガムが未来の燃料に トヨタのバイオ燃料プロジェクトが本格始動
東京電力福島第一原子力発電所が立地し、東日本大震災後に全町避難を経験した福島県大熊町で、トヨタ自動車を中心とした企業連合が、植物由来のバイオ燃料開発を加速させています。原料として注目されているのは、同町で栽培される穀物「ソルガム」です。この革新的なプロジェクトは、2026年4月から自動車レース「スーパーフォーミュラ」での燃料活用を通じて実用化段階に入り、二酸化炭素(CO2)排出削減と被災地の産業再生を両立させる未来のエネルギーとして期待を集めています。
大熊町の農地に広がるソルガム農園 約3万本がCO2吸収に貢献
水田が広がる大熊町の一角には、トヨタが管理するソルガム農園が設置されています。面積は約0.5ヘクタールで、夏期には約3万本のソルガムが植えられます。ソルガムはアフリカ原産の穀物で、国内では食用としてあまり利用されていませんが、品種改良が進み、大熊町では高さ6メートルに達するものや、収穫後すぐに再生する特性を持つものなど、88種類が試験栽培されています。これらのソルガムは生育過程でCO2を積極的に吸収し、脱炭素社会の実現に寄与します。
バイオエタノール製造施設で燃料化 スーパーフォーミュラでの実証試験を実施
大熊町内には、トヨタやエネルギー大手のエネオスなどで構成される「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合(ラビット)」が運営するバイオエタノール試験生産設備があります。ここでは、7日間の工程を経て、1トンのソルガムから約270リットルのバイオエタノールが製造可能です。このバイオエタノールはガソリンと混合して燃料として利用でき、燃焼時に大気中のCO2を増加させないカーボンニュートラルな特性を持ちます。
実用化に向けた第一歩として、2026年4月に栃木県で開幕する自動車レース「スーパーフォーミュラ」の今シーズン中、福島産バイオエタノールを10%混合した燃料が使用される予定です。ラビットは約1万リットルのバイオエタノールを供給し、高性能レースカーでの耐久性と効率性を検証します。これにより、将来の一般自動車向け燃料としての可能性が探られます。
被災地復興と新産業創出を目指す 課題はコスト削減と持続可能性
ラビットの中田浩一理事長(59)は、「原発事故をきっかけに被災地で脱炭素に取り組む意義は大きい」と強調しています。大熊町では避難指示の解除が進むものの、2025年3月末時点で営農再開した農地は震災前の6.7%に留まっており、ソルガム栽培はやせた土地でも育ちやすい特性から、荒れ地の再生と新たな産業創出に期待が寄せられています。吉田淳町長は、「現在は実証段階だが、社会実装につながり作付面積が拡大することを期待したい」と述べています。
今後の課題として、製造コストの削減が挙げられます。バイオエタノール製造後の残りかすを肥料として再利用する取り組みや、ソルガム以外の植物の利用研究も進められており、持続可能な燃料生産体制の構築が目指されています。このプロジェクトは、環境技術の進展と地域経済の活性化を同時に推進するモデルケースとして注目されています。



