マンション修繕委員会に潜入か 電気のつかない部屋の「住民」正体は工事会社員
千葉県の分譲マンションで、大規模修繕委員会に参加していた男性が、実は工事会社の社員である可能性が強まっている。住民らは昨夏から、男性が居住届を出している部屋に電気がつかない不審な状況を確認し続けてきた。この問題は、マンション修繕工事を巡る「なりすまし」の実態を浮き彫りにする新たな事例として注目されている。
電気のつかない部屋と不審な入居届
管理組合の住民によると、男性は2024年4月に入居届を提出した。ちょうどこの時期、マンションでは大規模修繕工事の検討が始まっており、男性は自ら立候補して修繕委員会の委員に就任した。委員会は同年7月以降、毎月開催され、男性は約10回にわたって参加。施工会社選考に関わるコンサルタント会社の選定方法などについて、積極的に意見を述べていたという。
しかし、住民らが気づいたのは、男性が居住を届け出た部屋に、ほとんど生活の気配が感じられない点だった。連日のように確認しても、電気がついている様子はなく、誰かが実際に住んでいる証拠は見当たらなかった。この不自然な状況が、住民の疑念を深めるきっかけとなった。
神奈川の事件を契機に浮上した「なりすまし」疑惑
状況が大きく動き始めたのは2025年夏頃である。きっかけは、神奈川県のマンションで起きた類似事件だった。同県では、修繕工事会社の社員が住民を装って修繕委員会に参加し、なりすましが発覚すると走って逃走。1週間後に県警に住居侵入容疑で逮捕される事態が発生し、朝日新聞が同年6月に報じていた。
この報道を受けて、千葉のマンション住民側に、業界関係者から情報提供があった。内容は「別のマンションで修繕委員を務めている人物が、皆さんのマンションでも委員をしている」というものだった。名指しされた委員こそ、電気のつかない部屋の男性であった。住民らは、神奈川の事件と同様に、外部の人物が委員会に潜入している可能性を強く疑うようになった。
住民の追及と男性の曖昧な反応
疑惑が高まる中、管理組合役員の住民らは男性に直接質問を試みた。男性は「めんどくさいから住所を変更していないだけ」と説明したが、この返答は住民の疑念を晴らすには不十分だった。委員会では、コンサルタント会社の候補を4社まで絞り込む段階まで進んでいたが、男性の正体が不明確なままでは、公正な工事選考が危ぶまれる状況となった。
住民らは、マンション修繕を巡る「なりすまし」の実態を調査する連載記事を参考にし、対策を模索している。大規模修繕工事は億単位の費用がかかることもあり、不正が横行しやすい分野として指摘されてきた。今回の事例は、管理組合の本人確認の重要性を改めて浮き彫りにしている。
拡大する修繕市場と防衛策の必要性
マンションの大規模修繕市場は拡大を続けており、工事受注を狙う施工会社の競争が激化している。その中で、住民を装って委員会に潜入し、自社に有利な方向に議論を導く「なりすまし」行為が後を絶たない。国土交通省は、管理組合に対する本人確認の強化方針を示しているが、現場での実効性が課題となっている。
千葉のマンションでは、住民らが「なりすまし発覚」を知らせる資料を配布し、注意を呼びかけている。今後も、類似の事例を防ぐためには、委員会参加者の身元確認を徹底するとともに、外部からの情報提供を受け付ける体制の整備が急務と言えそうだ。住民の警戒感は高まる一方であり、透明性のある修繕工事の実現が求められている。



