築35年マンションで発覚した「見えない異変」と高齢者狙いの手口
神奈川県相模原市の郊外に立つ築35年の分譲マンションで、通常では考えられない所有形態が確認された。12室あるワンルームマンションのうち、102号室と105号室だけが複数人が「持ち分」を所有する共有物件となっているのである。
78歳男性が400万円で買わされた「63分の8」の持ち分
この不自然な状況の背景には、判断力が衰えた高齢者を狙う悪質な業者の存在が浮かび上がっている。相模原市に住む78歳の男性は、業者から105号室の「63分の8」という極小の持ち分を400万円という不当な高値で買わされ、結果としてすべての預金を失う被害に遭った。
専門家によれば、この手口は認知症や判断力の低下が進んだ高齢者を標的にし、通常では考えられない条件で不動産の一部所有権を売りつけるという巧妙なものだ。男性は若い頃に離婚して以来、単身で暮らしており、そうした状況が業者に付け込まれた可能性が指摘されている。
弁護士が指摘する悪質業者の特徴と被害の実態
事情に詳しい弁護士は、この種の業者が以下のような特徴を持つと説明する:
- 高齢者の自宅を訪問し、親身に接するふりをして信頼関係を築く
- 複雑な不動産取引の内容をわかりやすく説明しているように見せかける
- 「投資になる」「資産形成に役立つ」などとメリットを強調する
- 判断力が不十分な状態での契約を急がせる
今回のケースでは、15平方メートルほどの狭小ワンルーム物件でありながら、複数人による共有状態が意図的に作り出された点が特異だ。通常、この規模の物件が共有になることは稀であり、業者が高齢者から不当な利益を得るために仕組んだ構造と考えられる。
高齢者を守るための具体的な対策とは
弁護士は、高齢者がこのような被害に遭わないために以下の対策を提案している:
- 家族や信頼できる第三者との相談:高額な不動産取引には必ず複数の目で確認する
- 公的機関への確認:消費生活センターや法テラスなどに相談し、取引内容の妥当性を検討する
- 成年後見制度の活用検討:判断力が衰え始めた段階で、法的保護を事前に準備する
- 契約書の徹底的な精査:専門家(弁護士や司法書士)に内容を確認してもらう
同様の手口は全国で報告されており、特に単身高齢者や認知症の初期段階にある人々が標的にされやすい。業者は「資産管理の専門家」を名乗ったり、「限定オファー」などと緊急性をあおったりするケースが多いという。
今回のマンションのように、一見普通の物件に見えながら、内部で不自然な所有関係が築かれているケースは、周囲が気づきにくいという問題もある。地域包括支援センターや民生委員など、地域の見守りネットワークとの連携が、早期発見には不可欠だ。
高齢化が進む日本社会において、判断力が低下した高齢者を守る制度的な整備とともに、家族や地域社会による日常的な見守りがますます重要になっている。不動産取引という人生で最も高額な取引の一つにおいて、悪質業者から高齢者をどう保護するかは、社会全体の課題と言えるだろう。



