南鳥島調査急浮上の背景に原発自治体の突き上げ
突如として浮上した南鳥島(東京都小笠原村)での「核のごみ」最終処分場調査。この動きの背景には、従来の自治体手挙げ方式の明らかな行き詰まりと、原発立地自治体からの強い突き上げがあった。使用済み核燃料から生じる高レベル放射性廃棄物の処分問題は、依然として解決の道筋が見えない状況が続いている。
国が初の能動的申し入れ
「国が主体的に申し入れを行うべきだという意見を多数いただいていたのは事実です。今できる最大限の対応として、能動的に申し入れをさせていただきました」
3月3日、小笠原村への調査申し入れ後、経済産業省資源エネルギー庁の横手広樹・放射性廃棄物対策課長は記者団の質問にこう答えた。地元議会の議決を待たずに国から直接調査を申し入れるという手法は、これまでに例のない初めての試みであった。
10万年の隔離が必要な核のごみ
使用済み核燃料から生じる高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は、10万年にわたり地下深くに隔離しなければならない。その最終処分場選定に向けた第一段階となる文献調査に着手できたのは、2020年からの北海道寿都町と神恵内村、そして2024年からの佐賀県玄海町のわずか3カ所のみである。
手挙げ方式の限界と自治体の苦悩
「日本列島でも適切な場所を選べば処分は可能」という理屈のもと、全国の自治体を対象に調査地の公募が始まったのは2002年のこと。当初は10カ所ほどの候補から1カ所に絞り込む計画で、文献調査だけで20億円、第二段階の概要調査では70億円の交付金が自治体に支払われる仕組みであった。
しかし現実には、各地で応募への動きが表面化しては立ち消えになる状況が繰り返されてきた。2023年には長崎県対馬市議会が調査請願を採択したものの、市長が拒否して頓挫。2025年には島根県益田市でも請願の動きがあったが、「地域を二分しかねない」として断念せざるを得なかった。
原発立地自治体からの強い要請
昨年11月に東京都内で開催された原発立地自治体の会合では、国の積極的な関与を求める声が相次いだ。
「わずか3カ所のみの状況を非常に憂慮している。国が主導権を握り、適地とされる市町村に能動的に働きかけるべきではないか」
佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長はこう訴えた。同町にはすでに九州電力玄海原発が立地しており、調査受け入れが他の自治体への「呼び水」となることを期待していた。しかし、その後も手挙げの動きは鈍いままである。
進め方の限界を指摘する声
他の首長からも従来の進め方に対する限界が指摘され始めている。原発を受け入れる地方自治体と、電力を消費する都市部との間の対話不足が長年にわたり指摘されてきたが、核のごみ問題においても同様の構図が浮かび上がっている。
南鳥島調査の申し入れは、国が従来の方針を転換し始めたことを示す象徴的な出来事となった。しかし、小笠原村民からは「あまりにも唐突だ」との声も上がっており、実現に向けては依然として高いハードルが存在する。
核のごみ最終処分場の選定は、単なる技術的問題を超え、世代を超えた責任と地域社会の合意形成という難しい課題を抱えている。国が能動的に動き始めたとはいえ、後世にとって最善の選択を見出す道のりはまだまだ険しいと言わざるを得ない。
