全国各地のマンホールの蓋をデザインした「マンホールカード」を収集する愛好家から、在庫切れが頻発し、転売が背景にあるのではないかとの声が上がっている。無料で配布されるカードがフリマサイトで高額取引される現状に、自治体や運営団体は頭を悩ませている。
マンホールカードとは
マンホールカードは、2016年に名古屋市など28自治体で発行が始まった名刺サイズのカード。表面には個性豊かなマンホールの蓋の写真と位置情報、裏面にはデザインの由来などが記載されている。下水道への理解と関心を深める目的で、現在は769自治体と4団体が1264種類のカードを制作。累計発行枚数は2300万枚を超え、年に3回新規発行されている。カードは自治体の観光案内所や庁舎、下水道関連施設で無料で1人1枚配布される。
収集家の嘆き
愛知県みよし市の男性(61)は、7、8年前からマンホールカードを収集し、北海道から九州まで約700枚を集めてきた。しかし、この2、3年で配布場所を訪れても在庫切れが目立つようになったという。男性は「カードの人気だけでは説明がつかない」と疑問を感じ、SNSでフリマサイトでの転売を知り、「転売目的で集める人がいるのでは」と考えるようになった。男性は「無料で楽しませてもらっているので、せめて感謝の気持ちを込めて土産物を買うようにしている。転売はゆゆしき問題だが、諦めの境地です」と話す。
フリマサイトでの実態
記者がフリマサイトを閲覧したところ、多くのマンホールカードが1枚数百円から数千円で出品され、中には1万円を超える高額取引も確認された。メルカリの広報担当者は「現時点で自社の出品禁止物に該当していないが、社会情勢に照らして見直しをしている」とコメントした。
転売対策の現状
2026年4月24日には第28弾として42自治体で新カードが発行されたが、早くも5月上旬にはフリマサイトに出品されていた。愛知県みよし市の担当者は「税金で発行しているものであり、本来の趣旨を理解してもらえず残念」と語る。中部地方のある自治体職員は「明らかに何度も並ぶ人がおり、2度目以降と判明すれば配布をお断りしているが、有効な対策はない」と明かす。大津市では転売対策として抽選方式を導入したが、配布開始直後から高額出品が相次ぎ、1万5千円を超える取引も成立した。市観光振興課の担当者は「法律で禁止されているわけではなく、個々のモラルに委ねるしかない」と悩む。
運営団体の取り組み
マンホールカード振興財団の代表理事・那須基さん(59)は「カードのプレミア化を防ぎ、転売価格を下げる対策が重要」と強調する。具体的な対策として、大都市圏では初回発行枚数を2000枚から4000枚に倍増したほか、自治体に継続配布を依頼。また、カードに記載されるロット番号を「1」と統一することで希少価値を下げる工夫も行っている。那須さんは「カードは下水道を知ってもらう素晴らしいツール。大半の人はモラルを守って楽しんでいる。その街の思い出と一緒に大切にしてもらいたい」と訴える。
法規制の難しさ
転売問題はマンホールカードに限らず、ポケモンカードやボンボンドロップシールなど様々な商品で広がっている。しかし、入手した物を売る行為は原則自由で、法律で一律に規制することは難しい。2019年に施行されたチケット不正転売禁止法も、コンサートやスポーツ観戦などの入場券のみが対象だ。転売問題に詳しい福井健策弁護士は「発行側が転売や複数枚取得を禁止する規約を定めれば、契約違反や詐欺罪が成立する可能性はある」と指摘する。



