坂本龍一さんのピアノが福島・広野町で「自然に還る」公開実験が始動
音楽家・アーティストの故坂本龍一さんのピアノを屋外に設置し、自然環境の中で時間とともに変化する過程を一般公開するプロジェクト「ピアノを自然に還す実験―2」が、福島県広野町で11日から本格的に開始される。このユニークな取り組みは、坂本さんの遺志を継ぐ関係者たちによって進められており、芸術と自然の関係性を深く考察する機会を提供する。
ピアノが広野町に到着 展示準備が進む
3日には、設置場所となる町文化交流施設「ひろの未来館」にピアノが運び込まれ、展示の最終準備が行われた。現場では、アートディレクターの山崎晴太郎さんがピアノの状態を慎重に確認する様子が見られた。このピアノは、坂本さんが最終アルバム「12」の制作に使用した1960年代製のスタインウェイ&サンズ製であり、特別な歴史的価値を持つ楽器だ。
坂本さんの遺志を継ぐ長期プロジェクト
坂本龍一さんは2019年から、米国ニューヨークの自宅の庭にピアノを置き、風雨にさらされる中で自然に還る過程を観察する個人的な実験を行っていた。今回のプロジェクトは、その取り組みを一般公開する形で発展させたものとなる。運営は、2023年に71歳で逝去した坂本さんの遺志を継ぐ一般社団法人坂本図書(東京都)と、山崎晴太郎さんのデザイン事務所「セイタロウデザイン」が共同で担当する。
プロジェクトでは、ピアノの様子をYouTubeで24時間ライブ配信し、世界中からその変化を観察できるようにする。11日午後1時からはひろの未来館でセレモニーが行われ、同2時から一般公開がスタートする予定だ。
山崎晴太郎さんの意気込みと展望
アートディレクターの山崎晴太郎さん(43)は、このプロジェクトについて「自然の一部としてあり続けるピアノを観察する長期的な取り組みです。芸術の域を超えた発展性があり、福島の地から世界に発信していきたい」と熱く語った。広野町を設置場所に選んだ理由として、坂本さんが被災地支援に熱心に取り組んでいたことや、自身も東北にゆかりがあり、広野町で開催されている「余白のアートフェア」に関わっている点を挙げた。
山崎さんはさらに、「自然にかえっていくピアノの姿を通じて、自然と文明の関係、人と時間の在り方などを考えてほしい」と説明。展示では、ピアノに触れることや、調律は外れているが実際に弾くことも可能で、「誰もが芸術家になれるという『社会彫刻』にしたい」と展望を明かした。
今後の展開については、地元の広野中学校やふたば未来学園など、子どもたちの活動に役立てる構想も持っている。山崎さんは「息の長い取り組みなので、全世界、全人類の共有財産となっていけば」と期待を込めている。
このプロジェクトは、坂本龍一さんの芸術的遺産を継承しつつ、自然と人間の共生を問いかける画期的な試みとして注目を集めている。広野町からの発信が、どのように世界に広がっていくのか、その経過が期待される。



