ファウストとメルニコフの黄金コンビ、近現代作品で各曲の違いが鮮烈に
ファウストとメルニコフの黄金コンビ、近現代作品で違い鮮烈

ファウストとメルニコフの黄金コンビ、近現代作品で各曲の違いが鮮烈に

ヴァイオリンのイザベル・ファウストとピアノのアレクサンドル・メルニコフという黄金コンビが、東京・銀座の王子ホールで一夜限りの演奏会を開催した。この二人の組み合わせが近現代作品を並べて演奏することは過去にもあったが、今回は各曲の違いがひときわ際立つ結果となった。

プロコフィエフからショスタコーヴィチへ

ファウストは、相変わらず音を練りに練る演奏スタイルを貫いた。それがプロコフィエフの「5つのメロディ」では、耳のご馳走となる。特に第3曲では、倍音奏法からサッと切りかえたビブラートの鮮やかさが印象的だった。

しかし、ショスタコーヴィチの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」第1楽章では、旋律を極力息長く紡ぐ演奏が晦渋すぎると感じられる場面もあった。ところが、後半でスピッカート奏法を用いることでハッとするような緊張と解放を生み出し、作曲家の意図を浮き彫りにした。

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メルニコフの凶暴なピアノと変奏曲の追求

第2楽章では、メルニコフが凶暴なまでにピアノを鳴らすこともあって、緩やかだった先行楽章を否定するかのような激しさを見せた。第3楽章では、二人して変奏曲形式を厳格に追求。これも放縦な先行楽章への異議を唱えるかのようで、つくづく天邪鬼なソナタであることを実感させた。

シェーンベルクとブゾーニの意外な側面

このあとに演奏されたシェーンベルクの「幻想曲」は、調性に拠らない12音技法の音楽でありながら、なんとロマンティックに聞こえることだろう。単なる曲順の効果ではなく、「語りかける」というドイツ音楽の伝統的一側面を、奏者らがしっかりと打ち出したからに他ならない。

そして最後のブゾーニ「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番」が、そうした側面の肥大化した例だと分かる。緊張気味に見えたピアノも、ここにきて解け、ハーモニーの行方をなめらかに示した。ヴァイオリンは、音を移動する際、時に指を滑らせ、媚態をさえ見せる。終盤のコラール旋律では音を少し低めに取り、いかにも19世紀末的な雰囲気を醸し出した。

脳裏に刺さるショスタコーヴィチ

これを当夜の白眉としたいところだが、どうにもショスタコーヴィチの作品が脳裏に刺さって離れない。20世紀からのトゲのように心に残る演奏だった。音楽評論家の舩木篤也氏も指摘するように、この一夜は近現代作品の多様性を存分に味わえる機会となった。

王子ホールでの演奏会は、クラシック音楽の深みと現代性を同時に感じさせる貴重な体験を提供した。ファウストとメルニコフのコンビネーションが、各作曲家の意図を鮮明に浮かび上がらせ、聴衆に強い印象を残した。

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