21世紀も4分の1が過ぎたというのに、最近では20世紀の遺物であるアナログ・レコードが空前のブームだという。往時と違うのはその情報源で、今時は何でもネットやAIだが、かつては数少なかった書籍や音楽誌、取扱店についても雑誌広告か口伝えだったと聞く。私は子供の頃から父所蔵のレコードや、ぐゎらん堂の厨房横の棚などで当然のようにそれらの音盤に触れていたが、それがいかに貴重な経験であったかを知るのはだいぶ後のことである。
吉祥寺とレコードといえば、忘れられない思い出がある。現在とは違い、ひっそりと閑とした路地だった中道通りに、芽瑠璃堂というレコード店があった。マニアックな品ぞろえのそのお店帰りの人物と父とが中道でばったり遭遇した。その人とは大滝詠一さんである。矢庭に大滝さんはその日のブツを路上に並べ始めた。それなりの枚数があったと記憶している。父と大滝さんは何やら楽しげにそれらについて語り合っては笑っていた。子供だった私にはそのさまが、スーパーカー消しゴムのコレクションを披露し合う自分たちと重なったが、あながちそれは間違っていない解釈だったのかもしれない。
父と大滝さんはいたく反りが合ったようだが、それは音楽性というよりも、そのスタンスというか方法論が共通していたが故ではないかと思う。確かめようにも、二人とももうこの世にはいない。今ごろどこかの路上で語り合っているに違いない。



