北斎と広重の雨と風の表現を比較「大浮世絵展」で天気の描き方に注目
北斎と広重の雨と風の表現を比較「大浮世絵展」

江戸後期の絵師、葛飾北斎(1760~1849年)と歌川広重(1797~1858年)の浮世絵の名品が一堂に集う「北斎・広重 大浮世絵展~二大巨匠!夢の競演」が、福島県郡山市の郡山市立美術館で開催中だ。本展では、両巨匠の作品を画題や表現など様々な観点から比較する「対決」が楽しめる。担当学芸員の塚本敬介さんと新田量子さんに、今回のテーマ「天気」に焦点を当てた見どころを聞いた。

対決その3「天気」:雨の表現を比較

風景を描くことは、自然と天気を描くことにつながる。北斎の「新板浮絵忠臣蔵 第五段目」(間判錦絵、1803~05年ごろ)と広重の「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」(大判錦絵、1833年ごろ)から、雨の表現について考察した。

―特に北斎は荒れ模様ですね。

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塚本さん(以下塚本):北斎は意外にも雨の風景画を多く残していません。本作は歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」の一場面であり、演出的な要素が強い作品です。

新田さん(以下新田):北斎の雨は力強い線で表現され、雷まで描かれています。画面を激しく演出しようとしたのかもしれません。

―広重の雨はいかがですか。

塚本:広重の雨は繊細で、誰にも真似できなかったでしょう。静けさの中にも激しさがあり、風情があります。

新田:木のざわめきから、その場の雰囲気が伝わってきます。「雨といえば広重」と言われる所以です。横殴りの雨だけでなく、縦に降らせる作品もあります。広重の作品同士を比べるのも面白いですよ。

―対照的な作風が興味深い両巨匠ですが、面識はあったのでしょうか。

塚本:直接的なエピソードはありませんが、北斎は広重より38歳年長で、広重が頭角を現した頃には業界の大先輩でした。同時代を生きた以上、お互い意識するところはあったのではないでしょうか。

風の可視化:見えないものを描く

雨に対し、目には見えない風をどう描くか。北斎の「冨嶽三十六景 駿州江尻」(大判錦絵、1831年ごろ)と広重の「東海道五拾三次之内 四日市 三重川」(大判錦絵、1833年ごろ)から、風を可視化する試みを追った。

―着眼点は。

塚本:風という見えないものを、見えるものでいかに表現するかがポイントです。傘に加えて懐紙を吹き飛ばした北斎の想像力は素晴らしい。この風には諦めるしかありません。ただ、重要な紙だったら大変です。何も書いていないようで良かったです。

新田:広重は、傘を追いかける人物の困った表情が良いです。北斎と違い、もう少しで届きそうだけど、道の脇の水にも落ちそうです。どうしても目が行ってしまいます。画面右の人物のたたずまいと好対照です。

―会場には浮世絵をより楽しめる仕掛けもあるそうですね。

新田:この2人をはじめ、作品の面白い部分を切り抜いたパネルが会場のあちこちにあります。どの作品に登場するか、照らし合わせてみてください。

―北斎は妙に青が目立ちます。

塚本:18世紀半ばにベルリンから青色の顔料、通称「ベロ藍」が輸入されました。鮮やかな色合いが特徴です。北斎はお気に入りだったようで、「冨嶽三十六景」で多用しています。広重もここぞというところで使っていますよ。

新田:それで北斎は「神奈川沖浪裏」を描きたくなったのかな。

塚本:なきにしもあらず…。シリーズの企画・販売を担う「版元」の意向も要素として考えられます。

―天気を描く上で、道具立てや人物は腕の見せどころだったのですね。

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郡山展限定グッズ:コラボ商品も販売

会場では、大浮世絵展と県内企業がコラボした調味料などの郡山展限定グッズを販売している。

主な商品は、ミカンをブレンドした茶葉「erba letter緑茶×みかん」(900円、郡山市・お茶の小野園)、まろやかな甘みが特徴の塩「智と華」(550円、広野町・吉田鉄工所)、「会津高田梅 みぞれぽん酢」(700円、会津坂下町・高砂屋商店)など。商品は変更になる場合がある。いずれも北斎や広重の浮世絵をあしらったパッケージデザインで、名画で食卓に彩りを加えられる。

関連企画:5月23日に記念講演会

関連企画として、23日午後2時から郡山市中央公民館で講演会が開かれる。川崎浮世絵ギャラリー学芸員で「大浮世絵展」の監修協力を務める山本野理子さんが「北斎と広重 二大巨匠競演の魅力」と題して講演する。参加は事前申し込み制で、専用フォームから申し込む。

展覧会概要

  • 会期:6月21日まで
  • 時間:午前9時半~午後5時(入館は午後4時半)
  • 休館日:月曜
  • 観覧料:一般1500円、高校・大学生1000円、中学生以下と障害者手帳を持っている人は無料
  • 主催:実行委(郡山市立美術館、福島中央テレビ、福島民友新聞社)
  • 問い合わせ:福島中央テレビ事業部(電話024-924-1100、平日午前9時半~午後5時半)

公式サイトは大浮世絵展公式サイトで確認できる。