新譜「Heimat/故郷」に込めた思い
2019年のロン・ティボー国際音楽コンクールで優勝し、現在はベルリンを拠点に活躍するピアニスト、三浦謙司が新たなアルバム「Heimat/故郷」を発表しました。この作品には、異国の地で未来を切り開く強い決意が込められています。
タイトルの「Heimat」はドイツ語で「故郷」を意味しますが、三浦は「自ら選んだ故郷」というニュアンスも含まれていると語り、その響きに魅力を感じていると言います。
異文化での生活と葛藤
神戸市で生まれ、ドバイやロンドンでの生活を経て、留学を機にベルリンに移り住んだ三浦。しかし、しばらくは「自分の居場所」という感覚を持てずにいました。転機となったのは、ドイツ人の妻との結婚と二人の子どもの誕生。地元の人々との交流が深まるにつれ、「このまま暮らすなら、しっかり自分に向き合おう」と決意したそうです。
異なる文化の中で永住することは容易ではなく、差別や疎外感を感じることもあります。それでも「受け入れられたい」という強い願いが、ドイツの作曲家たちが残した名曲と重なり合ったと三浦は振り返ります。
アルバム収録曲の解釈
アルバムにはベートーベン、ブラームス、シューマンなど、ドイツを代表する作曲家の作品が収められています。ベートーベンのピアノソナタ第23番「熱情」では、不安定さや緊張感を表現。ブラームスの「七つの幻想曲」では、諦めずに抗うエネルギーを込めました。一方、シューマンの「子供の情景」は、子どもを見守るような温かさにあふれた演奏に仕上がっています。
ピアニストとしての哲学
三浦は、ピアニストとは作品を解釈し、生かすための「器」であると考えています。「作曲家は自分の心臓を刺すような思いで魂を絞って曲を書いたはず。器になるには、存在するあらゆる感情を経験しないといけない」と語り、「どんな曲にも見合う器のように、でかい人間になりたい」と決意を新たにしています。
なお、本記事は共同通信の特集企画「クレッシェンド!」の一環で、若手実力派ピアニストの活躍を通じてピアノの魅力を伝えるものです。



