ヒット曲の構造変化、音楽配信の影響か 大学生が半世紀分を詳細分析
音楽配信サービスの普及が、楽曲の長さや構成に影響を与えている可能性が浮上している。曲全体や前奏(イントロ)が短縮され、聴き手を引きつける「サビ」部分がより早く登場する傾向が、過去50年間のヒット曲で確認されたのだ。
この興味深い分析を行ったのは、奈良大学社会学部4年生の早坂結音さん(22歳)。卒業論文として、1975年から2024年までの約半世紀にわたるヒット曲の変遷を定量的に調査し、明確なパターンを発見した。
SNSの気付きから本格的な研究へ
早坂さんは、尾上正人教授(社会学)のゼミに所属する学生だ。研究のきっかけは、ソーシャルメディア上で目にした「最近のヒット曲は短くなっている」という投稿だった。この指摘が事実かどうかを確かめようと、本格的な調査に乗り出したのである。
昨年秋、約1週間をかけて、各年の年間チャート上位10曲、合計約500曲を対象に分析を実施。音楽配信サービスや動画サイトを活用し、各楽曲の全体再生時間、前奏の長さ、サビが始まるまでの時間を詳細に計測した。サビについては「リズムやメロディーの反復性が高い部分」と定義して記録を行った。
曲の長さは増加から再び短縮へ
早坂さんの分析結果は、音楽産業の変化を如実に反映していた。曲全体の平均長さは、1970年代後半の228.6秒から1990年代後半には293.7秒へと徐々に伸長。しかし、2010年代後半には252.1秒、2020年代前半には242.2秒と、再び短縮傾向に転じていることが判明した。
さらに注目すべきは、前奏の平均長さの変化だ。1980年代から顕著な短縮傾向が見られ、近年ではより一層イントロ部分がコンパクトになっている。同時に、サビが曲中でより早いタイミングで登場する「サビ前倒し」の構造も強まっているという。
音楽の聴き方の変化が楽曲構造に影響
これらの傾向について、早坂さんは音楽配信サービスの普及など、音楽を聴く環境や習慣の変化が背景にあると考察している。現代のリスナーは、短時間で曲の核心部分に触れられることを求める傾向が強く、アーティストやプロデューサー側もそれに応じた楽曲制作を行っている可能性が高い。
スマートフォンやストリーミングサービスを通じて、気軽に多数の楽曲に触れる機会が増えた現代。リスナーの注意力を素早く掴み、離さないための戦略として、イントロの短縮とサビの前倒しが進んでいるのかもしれない。
この研究は、単なる楽曲の長さの変化だけでなく、テクノロジーの発展が文化の表現形式に与える影響についても示唆する内容となっている。音楽産業とリスナーの関係性がどのように進化していくのか、今後も注目が集まりそうだ。
