ほっとエンタメ 山田和樹が響かせる大爆音 クラシックからお経まで「交響的変容」34年ぶり再演 2026年5月19日 15時30分 (共同通信)
客席からの合唱の場面(C)2/FaithCompany
演奏者約700人、演奏時間計3時間半。その規模の大きさから今となっては演奏不可能と思われていた、水野修孝の「交響的変容」が5月、34年ぶりに再演された。
山田和樹の肝いり企画
東京芸術劇場の音楽部門芸術監督に就任した指揮者山田和樹が肝いりでシリーズ企画の第1弾として実現。ホールの規模に合わせ演奏者を減らしつつも、読売日本交響楽団などと共に会場をはみ出さんばかりの“大爆音”を響かせた。
初演から34年、水野修孝の渾身作
1992年に幕張メッセ(千葉市)で初演。現在92歳の水野が約25年をかけた渾身の一作だ。山田が「冷蔵庫に詰め込まれた食材全部を使った一皿の料理」と語るように、クラシックからポピュラー、お経まで多様な要素が盛り込まれている。
静かな低音で厳粛に始まる第1部。鐘の乱打と共に盛り上がり「カオス」な音響が広がる。多彩なリズムが豪快に入り乱れる第3部では、ミラーボールばりに光を放つ照明の演出でバブル期の雰囲気に。中間部では林英哲の和太鼓と読響奏者のティンパニが激しい音の応酬を繰り広げた。
白眉は原爆の恐ろしさを歌う合唱が参加する第4部。客席に乱入した歌い手が、あらゆる場所から東南アジアの歌を歌う。山田も含め9人の指揮者が登場。次第にどこか懐かしい響きに落ち着き、心が清められる思いがした。最後は法華経とミサのテキストが同時に歌われフェードアウトするように終わる。案外あっけないが、初演後に日本が歩んだ「失われた30年」の暗示にも思えた。
再演の意義
価値観が多様化し、社会の分断も目立つ今、あらゆるものをごちゃ混ぜにして閉塞感を打破するようなこの曲を再演した意義は大きいだろう。時代はこの先どう「変容」するか。大きな問いを投げかけられた気がした。(共同通信=田北明大)



