福井県勝山市に、県立大学の新たなキャンパスが完成した。場所は村岡町の県立恐竜博物館の隣接地で、2026年4月から恐竜学部の1期生となる2年生34人が通学を始めている。勝山市内に大学の校舎が設けられるのは初めてのことであり、市外からは23人の学生が移り住んだ。行政や市民は、新たな生活を送る学生たちを応援し、市内に新たな活気をもたらしたいと考えている。どのような未来を描いているのか、詳しく調査した。
生活応援制度で学生を支援
勝山市は2025年度、恐竜学部の学生を対象にした生活応援制度を創設した。家賃は月額1万円、自動車の維持費は月5千円、バイクは月3千円を上限に補助する。さらに、「学び応援金」として毎月1万円を給付している。現在、市出身者2人を含む市内居住の学生25人全員がこの制度を活用している。
また、県立大学出身の市職員ら11人で「県立大学恐竜学部生暮らしサポートチーム」を結成。昨年度から定期的に大学に出向いて相談会を開き、住まいや買い物など日常生活の悩みを聞き、不安の解消に努めている。毎週木曜日は、全講義終了後に路線バスの運行がないため、マイカーを持たない学生を公用車で自宅近くまで送迎している。
学生と共にまちづくり
市未来創造課の担当者は、「勝山市は学生のまちではない。学生とコミュニケーションを取り、政策に反映させることが重要だ。学生の移住はこれまでにないチャンスであり、卒業後も勝山市と関わりを持ち、最終的には定住につなげたい」と期待を寄せる。
大阪府から移住し、昨年から市地域おこし協力隊として活動するハートマン絵里子さんは、同じ移住者の立場から学生を伴走支援している。今後、学生が調理した料理を市民と一緒に食べるイベントを開くなど、自宅と大学以外に学生の居場所を作ろうとしている。「勝山市に愛着を持つ理由を『ただ住んでいるから』ではなく『良い場所だから』にしたい」と力を込める。
民間も動き出す
動きは民間にも広がっている。県立恐竜博物館の化石発掘調査にも携わり、市内に学生アパート「白亜紀ダイナ荘」を建設・運営する大北久保建設の和田晃幸社長は、「勝山を第二のふるさとと思ってもらえるよう、学生と一緒にまちおこしに挑みたい」と意気込む。今月10日には、学生5人と和田社長、同社社員らが市内の飲食店に集まり、恐竜談議に花を咲かせた。
学生たちは勝山市の印象を「自然が多く住みやすい」「静かで落ち着いている」などと語った。一方、福島県出身の山崎瑠璃さん(19)は、恐竜を売りにした市内施設のデザインに恐竜でない翼竜やドラゴンが混在している点を挙げ、「市民の恐竜への理解が低い」と指摘した。和田社長は「私たちには化石発掘の技術はあるが、恐竜の知識はない。恐竜に詳しい学生から知見を得ることで、勝山市はもっと面白いまちになれる」と展望を語る。
将来への展望
1期生が4年生になる2年後には、学部生2~4年生約100人が勝山キャンパスに通う見込みだ。さらに、2029年度に開設予定の恐竜学専門の大学院に進む学生は、博士課程修了までの最長8年間を勝山市で過ごすことになる。
卒業までの勝山での思い出が、大学での学びだけに終わらないようにしてほしい。温かい住民や自然に触れ、支援を受けながら、まちの「恐竜以外の面」にも愛着を持ってもらえることを願う。



