作曲家でピアニストの秩父英里が、2作目のアルバム「Looking Back, Looking Forward」(リボーンウッド)を発表した。米ニューヨークで録音し、ピアノに2人のパーカッション奏者、サックス、ベースという一風変わったクインテット(五重奏)編成で生まれた作品だ。
東北で名高いピアニスト、コロナ禍で仙台に帰郷
秩父はとりわけ東北では有名なピアニストである。米バークリー音楽大学でジャズ作曲などを学び、数々の音楽賞を受賞。これからというタイミングでコロナ禍となり、2020年、一時帰国のつもりで地元の仙台に帰った。「1、2か月で戻れるかな」との予想に反して今も日本にいる。CMにテレビ番組、イベントなどに楽曲を提供し、引く手あまたの売れっ子となった。
ニューヨークで新作を録音したのは「スタジオに行ってみたかった」という純粋な動機からだと、ほほ笑む。バークリー時代の知人らもよく利用する、伝統あるスタジオだという。
師弟関係の2人が彩りを加える
アルバムには「日記を書くように作った」という10曲を収録。サックス奏者のレミー・ル・ブーフが芯の強いメロディーを奏で、親交の深いKanと所属バンドでグラミー賞を受賞した小川慶太という2人のパーカッション奏者らが彩りを加えた。小川はKanの師匠にあたり、「師匠と弟子、関係の強い2人が参加したら面白いかな」と声をかけた。複数の打楽器の並べ方は師弟でも全く異なっており、「音色やテクスチャー(感触)がより生きる」作品に仕上がった。
「居場所」が作品に直結
帰国後は、米国に戻るかどうかは「まだ決めていない」と話していた。あれから6年。相変わらず先のことは決めていないという。作曲家として「居場所」が作品に直結すると考えているからだ。
「たとえば、バークリーがあるボストンは学生が多くエネルギーあふれる環境ですが、シャワーの水の出が悪い。日本は水がよく出て、みずみずしい。家の中に家族がいて、見知った道が多い。公園や川がある。そういった全てのことがインプットされ、何らかの形で表れてくるんです」
日本で作曲の仕事が次々と舞い込んだのも、予期せぬ出会いが重なったからだった。「風に吹かれて、波に乗りつつ、でいいのかな」



