東京都目黒区のLDHスタジオで、60歳以上限定のダンス教室が開かれている。1990年代のヒット曲に合わせて踊りながら、フレイル予防や介護予防につなげる取り組みだ。
懐かしの曲で体を動かす
スタジオに近づくと、ウエストが見える丈の短いトップスにだぼだぼのパンツをはいた少女たちが出てきた。服装からして場違いだと感じながらも、勇気を出してガラス張りのスタジオに入ると、前と横は全面鏡。かっこよくてテンションが上がる。
LDH所属インストラクターのASAMI先生の指導で、まずは体をほぐすところから。曲は1996年にドラマの主題歌として大ヒットした、久保田利伸 with ナオミ・キャンベルの「LA・LA・LA LOVE SONG」。前後計4台のスピーカーから響く音に合わせて体を揺らすと、なんだか気分がいい。
EXILEの振り付けをアレンジ
続いて、西城秀樹さんの「YOUNG MAN」でおなじみの、みんな大好きヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」。カウントを打つASAMI先生がエモい。そしてメインは、バブルガム・ブラザーズの名曲「WON'T BE LONG」。1990年、まさにバブル真っ盛りのころの曲だ。
振り付けを何回かに分けて覚えて、皆で踊る。「クラブで踊っているイメージで。そこにミラーボールが下がってくると思って!」とASAMI先生。ミラーボールを知るディスコ世代とクラブ文化の融合が図られ、さりげなく「しっかり股関節を動かしましょう。フレイル予防にいいですよ」と衰えそうな機能改善を意識させる。
EXILEの振り付けをアレンジしただけあって、サビの部分では腕をグルグル回すダンスにスタジオのボルテージがさらに高まる。楽しい! 腕がちゃんと回っているかどうかも怪しいが、はたから見てどうかなんて、もう気にならない。自分がよければそれでいい。ときどき間違えたり、盆踊りみたいになったりするのはご愛敬。1時間のレッスンはあっという間だった。
介護予防の新たな取り組み
このダンス教室は、2025年度から目黒区が健康づくりを目的として行っている「メグロダンスコネクション シニア・ウェルネス・プロジェクト」の一つ。30人の定員に対し、毎回応募多数で抽選になるそう。
今回参加していた60歳の女性は、「歌謡曲に合わせて踊るのが好きで、還暦になったら参加したいと思っていました。3回目の応募でやっと当選して楽しみにして来ました」と声を弾ませていた。
区の窓口は介護保険課。つまり、介護予防のために取り組んでいる。担当者は「介護予防の講座参加者は70代後半から80代が中心。60代が参加したくなるものとして、目黒区に本社を置くLDHの協力を得てダンスに取り組むことにしました。楽しんでもらいながら、フレイル予防に加えて新しいつながりの場となれば」と話す。
さらに目黒区ではシニアのインストラクターも育成中で、今年4月から別の会場でも教室を開いている。
2040年問題への備え
日本の高齢化は想定を上回るペースで進んでいる。現在50代前半の団塊ジュニアが65歳を迎える2040年ごろには高齢化率が35%に上り、3人に1人が高齢者となる。「2040年問題」とも言われ、医療や介護などの社会保障費が重くのしかかり、インフラの老朽化や深刻な人手不足が想定される。
2040年問題を取り上げた読売新聞の記事には、対策として「ひとり一人が健康を維持し、できるだけ長く働くことが最大の自衛策になる」との有識者のコメントがあった。健康への投資は最重要と考え、転ばぬ先のつえとなるようピラティスに取り組むことにした。そして先々はLDHでダンスを習って、TikTokでダンスチャレンジもやってみたい――。そんな妄想を膨らませていると、なんだか60歳になるのが楽しみになってきた。



