博物館や美術館のショップに並ぶグッズは、展示品と並ぶ楽しみの一つ。ミュージアムグッズ愛好家の大沢夏美さん(38)は、大学時代にグッズの魅力に取り憑かれ、30代でその道を極める決意をした。現在は北海道大学大学院の博士課程で研究を続けながら、全国の博物館を応援している。
絶滅哺乳類キーホルダーとの出会い
大沢さんがグッズに目覚めたのは、大学3年の博物館実習でのこと。北海道大学総合博物館で、北太平洋沿岸に生息していた絶滅哺乳類「デスモスチルス」のキーホルダーに出会った。「カバのような姿で、とてもマニアックでかわいかった」と振り返る。この出会いがきっかけで、全国の博物館にはそれぞれ特徴的なグッズがあるはずだと考え、大学卒業後は北大大学院修士課程に進んだ。
修士課程では博物館経営の観点からグッズを研究。周りは博物館好きばかりで楽しい日々だったが、「このままでは視野が狭くなる」と不安を感じ、修士号取得後はIT企業に就職。29歳で結婚し、当時小学3年生だった夫の娘との生活が始まった。
小冊子から愛好家へ
仕事を辞めて子育てに専念していた時、友人から「ミュージアムグッズの小冊子を作ってイベントで売ってみたら」と勧められた。「そうだ、私ってグッズが大好きだったんだ」と学生時代の熱を思い出し、夫も「楽しそうに生きる姿を娘に見せてほしい」と応援。札幌市内の博物館や美術館のグッズを紹介した小冊子は100部完売した。これを機に「ミュージアムグッズ愛好家」を名乗るようになった。「専門家はおこがましいが、愛にあふれていることは確か。愛好家がちょうど良かった」と話す。30歳の時だった。
愛好家から研究者へ
ミュージアムグッズは収益で博物館経営を助けるだけでなく、収蔵品の価値を伝える教育的役割も担う。各館の課題は集客力や収蔵場所、財源など様々で、学術的に分析し改善策を探るため、2023年から北大大学院博士課程で再び研究している。35歳を過ぎてからの学生生活は体力的に大変で、「頭の回転の速い若者との差にへこむこともある」が、「現場の感覚を知る大沢さんにしかつかめない課題がある」と言われ、必死に食らいつく毎日だ。
最近は全国の博物館や美術館で講演する機会が増え、その度にグッズを買い集めるため、家にあるグッズは3000点を超えた。「眺めているだけでも、正解や成功パターンは各館によって違うことがわかる。愛好家から始まった研究者として各館をつなぎ、存続を応援したい」と語る。
子どもにどんな背中を見せるか
取材は大沢さんが札幌から上京したタイミングで、住友家収集の美術品を扱う泉屋博古館東京(港区)のショップで行われた。記者と共にモネの絵画がプリントされたブックカバーなどを購入し、大盛り上がりしたという。大沢さんは「私はグッズを買うために仕事しているようなもの」と語り、人生を楽しむ母親の姿を見て育つ娘さんは「お母さんのような大人になりたい」と思っているだろうと記者は記している。



