福井・美浜町新庄の八朔祭、天狗が女性追い回す奇祭に笑顔
福井・美浜町新庄の八朔祭、天狗が女性追い回す奇祭

福井県美浜町新庄で9月6日、五穀豊穣を祈る伝統行事「八朔祭」が開かれ、天狗が女性を追い回す奇祭に多くの笑顔が広がった。区長の藤原達弥さん(67)によると、この祭りは数百年前から伝わるとされる。

東西から奉納される樽神輿

祭りでは、新庄の東字と西字に分かれ、双方から樽神輿が日吉神社へ奉納される。その露払いとして登場するのが天狗で、懐に男根をかたどった木の棒を抱え、女性はつつかれると子宝に恵まれるという。藤原さんは「天狗は祭りを盛り上げる主役でもあります」と話す。

東字では、赤い幟を掲げた裃姿の子役の先導で、樽神輿の行列が整然と進む。今年の子役は町立美浜中央小3年の男子児童(8)。祖父も父も務めた大役を無事に果たし、「簡単と思っていたけど、やってみたら幟は重いし緊張するし、ほんまに大変。でも最後まで頑張れた」と笑顔を見せた。

暴れ神輿と天狗の追いかけ

一方、西字の樽神輿は「暴れ神輿」と呼ばれ、派手な法被姿の担ぎ手によって民家や集会所の中までなだれ込む。いずれの沿道でも、天狗が女性めがけて走り、写真を撮ろうとスマホを構え、闘牛士のように立ち回る女性もいて、周囲は笑い声に包まれた。

京都府宇治田原町から嫁いできて30年になる女性(56)は「初めて見た時はなんて奇妙な祭りだろうと驚いたけど、娘を授かり、いい子に育ってくれた。御利益がありました」と語る。

天狗の正体と祭りの変更

誰が天狗になるかは、本人にも直前まで知らされない。「朝、役員に肩をたたかれて『頼むで』と言われ、来たか、と思った」と、20歳代の男性が打ち明けてくれた。天狗役の男性は「面をかぶると周囲はほとんど見えず、つつく相手も自分もけがをしないよう、細心の注意を払わないといけない。もうへとへとです」と語りつつも、その表情は充実していた。

「奇祭」と呼ばれる祭りに最初は少し身構えていたが、女性の一人が「天狗は祭りのアイドルなんですよ」と教えてくれた。誰もが笑顔で楽しんでいる様子に、気付くとすっかりなじんでいた。祭りは以前は9月1日に開かれていたが、2年前から9月の第1日曜に変更された。