三重県で熱帯植物バニラの栽培が始動!IT企業と食品会社がスマート農業で挑戦
熱帯植物であるバニラは、国内消費量のほぼ全量を輸入に依存している希少な作物だ。そのバニラの栽培が、三重県津市の農地で新たに始まった。IT機器販売保守を手掛ける三重リコピーと、給食事業や美容事業を展開するトモHDが連携し、ともに初めて農業分野に参入。栽培環境を制御する機器とプログラムを組み合わせ、栽培を自動化したスマート農業への挑戦がスタートしている。
異業種連携で実現したバニラ栽培プロジェクト
約700平方メートルのビニールハウスの一角には、バニラの苗が植えられた鉢が約10メートルにわたって5列並んでいる。バニラは熱帯雨林の樹木にツルを巻き付けて育つ植物であり、列ごとにツルを巻き付かせる資材や土を変え、効果的な栽培方法に関する研究を進めている。もともと農業とは無縁だった両社だが、三重リコピーが培ってきたIT技術をより発展的に活用できないかとスマート農業への参入を企画。共通の知り合いを介してトモHDと出会い、国内での希少性が高いバニラに着目した。
バニラは食品のほか、香料として化粧品にも使用される。給食事業に加え、化粧品の開発も行うトモHDのニーズに適した作物であり、互いの会社が持つ技術を生かしながら昨年4月から準備を進めてきた。本年度から本格的に栽培を開始したが、実が付くまでには短くてもあと2年ほどかかると見込まれている。
IT技術を駆使した環境制御システム
バニラは直射日光や低温に弱い特性を持つため、ハウス内には気温や湿度、二酸化炭素濃度などを計測するセンサーを中央に設置。環境を遠隔で制御するシステムを構築している。環境制御の指示はスマートフォンからも送ることが可能で、三重リコピー事業戦略室の喜田崇室長によると「東京にいても制御可能であり、暑ければミストをかけることもできる」という。
三重リコピーは、センサーを通して蓄積されたデータをもとに、一定の条件になれば屋根を開閉するなど、生育を促進するためのプログラムを組み、栽培計画を立てていく。このスマート農業のシステムは、バニラ栽培を通じて構築し、将来的には他の場所や作物への応用を目指す方針だ。
県内での栽培可能性と今後の展望
三重県農業研究所茶業・花植木研究室によると、これまでバニラは国内でも九州など比較的温暖な地域で栽培されてきた。同研究室の担当者は「熱帯性の作物が、三重県のようなこれまでより北の地域で作れるとなれば、他の作物へも応用できる可能性がある」と期待を寄せている。
トモHDグリーンテック事業部の秦和夫部長は、元々農業分野の県職員として働いていた経験を持つ。バニラ栽培に当たっては助言も行い「化粧品という肌に用いるものなので、農薬を使わずに育てたい」と語る。準備期間を通じて「気温が35度を超えると育たない。高温対策は必要だ」といった課題も浮かび上がってきた。
喜田室長は、異業種の企業にもハウスを見学してもらい「例えば工場でも、熱中症対策としてセンサーと連動して室内の温度を下げるなど、より良い環境で働ける設備の参考にしてもらえたら」と話す。今後、数年かけてバニラを通したスマート農業のシステムを構築し、農業技術の革新を目指していく構えだ。



