東京都、産婦健診を10月から全域で公費負担に 葛飾区の先行事例が示す効果
東京都、産婦健診を10月から全域で公費負担に (12.02.2026)

東京都が産婦健診を全域で公費負担に 10月から実施へ

出産後間もない女性の心身の状態を確認する「産婦健診」が、東京都の全区市町村において、今年10月から公費負担となることが決定した。全国では既に8割を超える自治体が公費負担を導入しているが、都内ではこれまで葛飾区や八王子市など6自治体(2024年度末時点)に限られていた。都はこの取り組みを通じて、産後うつや虐待の早期発見・予防を強化する方針だ。

共通受診制度の導入で全62区市町村が合意

産婦健診は、母子保健法に基づき区市町村が必要に応じて実施するものとされている。出産後2週間から1カ月頃を目安に、母体の回復状況や精神状態を医療機関でチェックする。東京都は全域での実施に向け、昨年3月に検討会を設置し、区市町村共通の受診ルールや受診票を作成。これにより、全62区市町村が導入に合意した。

各自治体は受診票を配布し、出産した女性は委託医療機関で産後2週間と1カ月頃の2回、定められた項目を原則自己負担なしで受診できる。1回あたりの補助額は5000円で、都は医療機関向けの手引作成や周知活動を進め、10月の開始を目指している。2026年度当初予算案には、区市町村への補助や普及啓発費用が盛り込まれた。

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なお、「里帰り出産」などで都外で出産し健診を受けた場合の対応は、各自治体が個別に定めることとなる。国は2017年度に費用助成事業を創設しており、2024年度には1445の区市町村が実施。1回5000円の補助額を国と自治体が折半して負担している。

医療機関の地域格差や財政負担が課題に

都内で産婦健診の公費負担が広がらなかった背景には、医療機関や専門医の数が地域によって異なること、そして財政負担の大きさが指摘されていた。区市町村や都議会からは、共通受診制度の導入を求める声が上がっていた。

同時に、新生児の1カ月健診も10月から同様の共通受診制度が導入され、全域で公費負担となる。妊婦健診は既に国内の全自治体で公費負担が実現している。都福祉局の砂賀満帆担当課長は「行政が産後うつなどのリスクを把握しやすくなり、母子への支援につなげる意義は大きい」と強調する。

先行する葛飾区の取り組みとその成果

都内でいち早く2021年10月に産婦健診の公費負担を開始した葛飾区では、毎年度、受診者の6〜7%について区に連絡が入り、産後ケアなどの支援につながっている。区青戸保健センターの柳池三智子所長は「心身が不安定になる時期に、本人からのSOSがなくても、産婦健診を通じて行政が早期にフォローできている」と効果を実感している。

メンタルヘルスアンケートで早期スクリーニング

葛飾区では、議会や地元医師会からの要望を受け、公費負担を検討。実施に当たっては、区内や近隣の精神科医療機関にも事業説明や協力を依頼した。計2回、1回あたり5500円を上限に助成し、2025年度予算は1356万円。2024年度は、出産2週間後の受診率が12.4%、1カ月後が68.1%(いずれも対出生数)だった。

健診では産婦にメンタルヘルスアンケートを実施。個別対応が必要と判断された場合、医療機関が区の保健センターに連絡する。区の保健師らが電話や訪問で状況を把握し、育児相談や産後ケアなどの支援につなげている。

以前は、区が最初に母子と接する機会は生後4カ月までの乳児宅を訪問する「赤ちゃん訪問」が主だったが、産婦健診の導入により、より早い段階で関われるようになった。赤ちゃん訪問でのメンタルヘルスアンケートで対応が必要なケースも減少しており、区は「効果的にスクリーニングできている」と評価している。

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この取り組みは、産後の女性が直面するさまざまなリスクに対して、行政のサポートを早期に提供する重要な役割を果たしている。東京都全体での公費負担化により、より多くの母子が適切な支援を受けられる環境が整うことが期待される。