県庁を退職し、絵本専門の書店をオープン
鹿児島県姶良市に昨年10月、絵本専門の書店「えほん もりのなか」がオープンした。経営するのは、絵本専門士の資格を持つ森ゆかりさん(58歳)。30年以上務めた県庁を早期退職し、新たな道を歩み始めた。
育児中の孤独感を癒した100冊の絵本
森さんが絵本と深く関わるようになったきっかけは、1995年にさかのぼる。第1子が生まれ育児休業中、訪問販売で絵本100冊をまとめて購入した。「約10万円と決して安くはなかったが、『だまされたと思って買ってみよう』と手を伸べた」と振り返る。
当時、育児中で心の余裕がなかった森さんは、声に出して絵本を読んでみると、気持ちが前向きになり、孤独感も和らいだという。それからは600冊ほどの絵本を集め、末っ子が小学校低学年になるまで10年以上、毎晩のように家で読み聞かせを続けた。
ボランティア活動から専門資格取得へ
2018年、末っ子の進学をきっかけに、かごしまメルヘン館で読み聞かせのボランティアを開始。県内の読書グループに参加し、本を使わずに物語を語りかける「ストーリーテリング」にも挑戦した。
幼稚園や保育園、小学校などで読み聞かせをするうちに、「絵本の力」をより多くの人に伝えたいと思うようになった。2020年3月に県庁を早期退職し、2022年5月には絵本に関する高度な知識を身につける絵本専門士の資格を取得した。
絵本専門士として学んだこと
資格取得の過程では、児童文学作家や絵本評論家らの講座を受講。絵本の読み方や並べ方などを学び、読み聞かせは読み手と聞き手が共につくるもので、それぞれの解釈を一緒に楽しむことが大事だと考えるようになった。
「絵本専門士の資格を取ったことで、より深く絵本の世界を理解できるようになった」と森さんは語る。
地域に根ざした絵本文化の醸成
2024年には、鹿児島市の「かもいけみらいの森」内にある「えほん図書館」の開館にも携わり、昨年10月に自身の店を開くことができた。
現在、森さんは絵本専門書店の経営を通じて、地域の子どもたちや保護者に絵本の魅力を伝え続けている。育児中の経験が、今では多くの人の心の支えとなる活動へと発展している。



