静岡の名物どら焼き専門店「河内屋」が38年の歴史に幕 店主のこだわり味に感謝の声
静岡市葵区の「静岡浅間通り商店街」で長年親しまれてきたどら焼き専門店「どらやきの河内屋」が、今月末をもって38年の歴史に終止符を打つ。店主の森広良さん(75)は体力の限界を理由に閉店を決断し、最後の日まで笑顔で客をもてなすと誓っている。客の目の前の鉄板で焼き上げるスタイルが特徴で、県内外に多くのファンを持つ名店として知られてきた。
閉店発表で連日多くの客が詰めかける
年明けに閉店が発表されると、県内外から連日多くの客が訪れ、長蛇の列ができる日も続いている。2月22日には午前5時頃から客が並び始め、10時半の開店時には100人以上が列をなした。店前では、熱々のどら焼きを頬張り、満足そうな表情を浮かべる客の姿が多く見られた。常連客からは花束や手紙が贈られ、ねぎらいの言葉がかけられるなど、感謝の気持ちが溢れる光景が広がった。
静岡市葵区出身で千葉市から夜行バスで訪れた会社員(47)は、「おいしすぎて河内屋のどら焼きしか食べられない。なくなるのは本当に残念だ」と惜しんだ。このように、思い出の味を求めて遠方から足を運ぶ客も少なくない。
店主のこだわりと客思いの精神
森さんは客と軽妙に会話を交わしながら、焼きたてのもっちりとした生地に、北海道十勝産小豆を使った自家製粒あんをたっぷり挟む。一つ160円(税込み)のどら焼き生地には、日本酒や粉ミルクなどを混ぜるのがこだわりで、食材費高騰の影響を受けても価格を変えず、味の質を追求し続けてきた。
「もうけより、客に喜んでもらうために味を良くしたい」という客思いの精神が根底にあり、無料であめを配ったり、マーマレード入りのどら焼きをサービスで作ったりすることも。森さんは「客の笑顔を見ると、ついサービスしちゃうんだ」と笑顔で語る。
夫婦二人三脚で築いた40年近い歴史
森さんは17歳で和菓子の世界に入り、県外で約10年の修業を積んだ。三島市で初めて和菓子店を開くも、一人での切り盛りは難しく、6年で店を閉めた。その後、妻の美千代さん(75)と出会い、「得意のあんこを使ったどら焼きで勝負したい」と、1988年に現在のどら焼き専門店を構えた。以来、夫婦二人三脚で店を切り盛りしてきた。
「40年近く続けられたのは女房のおかげだ。店を閉めたら、家で女房とゆっくり過ごしたい」と森さんは優しくほほえんだ。閉店後は、静かな余生を送る計画だという。
この閉店は、地元の観光名所としても愛されてきた静岡浅間通り商店街にとって、一つの時代の終わりを告げる出来事となっている。多くのファンが最後の味を求めて訪れ、感謝の気持ちを伝えながら、38年間の歴史に別れを告げている。



