愛知県田原市で三倍体カキの養殖に成功、ICT活用で品質向上を実現
愛知県田原市の福江湾において、小中山漁業協同組合と渥美漁業協同組合のカキ部会が、スマート技術(ICT技術)を活用した「三倍体カキ」の養殖に成功した。両組合は、この新たな水産資源を田原の食の名物として育て上げることを目指しており、地域の水産業に新たな風を吹き込む取り組みとして注目を集めている。
三倍体カキの特性と養殖の背景
三倍体とは、多くの生物が同じ種類の染色体を2本ずつ持つのに対し、それを3本ずつ持つ状態を指す。この状態では生殖細胞の形成が困難であり、精子や卵ができにくいという特徴がある。染色体のセットが多いため、大きく成長する傾向も見られる。農業分野では、この性質を利用して種なしスイカやバナナなどが栽培されており、水産業でも同様のメリットが期待されている。
人工種苗として開発された三倍体カキは、産卵による栄養分の消耗がないため、夏場でも身が痩せにくく、年間を通して安定した品質を維持できる。愛知県内では蒲郡市などでも同様の取り組みが進められており、水産業の持続可能性を高める技術として期待が高まっている。
ICTを活用したスマート養殖の導入
近年、全国的に二枚貝類の資源量が減少しており、田原市でもアサリ漁が著しい不漁に悩まされている。こうした状況を受け、両組合は安定的で持続可能な水産業を目指し、新たな水産資源として三倍体カキに着目。昨年5月からICT技術を活用し、養殖環境や作業データを収集・分析するスマート養殖に取り組んできた。
養殖方法は、従来のホタテ殻などをイカダにつるす方式ではなく、稚貝を一粒ずつバラの状態で養殖バスケットに入れて育てる「シングルシード式養殖」を採用。この方法では、カキが固定されずに波に揺られながら成長するため、身が締まり、うま味が凝縮されるほか、形が美しくなるという利点がある。
試食イベント開催と今後の展望
新年度からの販売・ブランド化に向け、両組合は2月28日、三倍体カキの試食イベントを伊良湖菜の花ガーデンで初めて開催した。イベントでは、福江産の通常養殖カキ1個と三倍体カキ2個のセットを500円(税込み)で提供。蒸してから焼いて提供され、参加者はその場で食べ比べを楽しむことができた。
カキ部会長の川口拓馬さんは「一年中プリプリで濃厚なうま味を楽しめる三倍体カキを、新たな田原の名物に育てたい」と意気込みを語っている。この取り組みは、地域の水産業の活性化と、持続可能な資源管理の両面から評価されており、今後の展開が期待される。
問い合わせは小中山漁業協同組合(0531-32-0219)まで。



