名古屋城天守の木造復元事業を主導してきた前市長の河村たかし衆院議員、今の思いは
名古屋城天守の木造復元事業を巡り、市は開発中の小型昇降機について、5月中に設置階に関する考えを示すとしている。2023年6月のバリアフリーを巡る市民討論会で差別発言が起き、事業が事実上ストップしてから3年。再スタートを前に、事業をリードしてきた前市長の河村たかし衆院議員(77)=愛知1区=に復元に込める思いを聞いた。
「史実に忠実な復元」へのこだわり
-「史実に忠実な復元」を主張している。なぜこだわるのか。
太平洋戦争で文化も伝統も完全に壊されたが、名古屋城は完全な図面が残った。図面を作った一人が残したメモに「この戦争で破壊される可能性がある。その時に備えて完全な図面を残すから、ぜひ復元してください。そうすれば市民も安心するだろう」との旨が書かれている。図面を基に完全に復元ができれば、圧倒的な本物性がある。かけがえのないものを残すことができる。
エレベーター設置についての考え
-エレベーターや昇降機はどうすべきと考えるか。
結論を言うと、付けない。昔は妥協して「1、2階までは」と言っていたけれど、自分なりに勉強を深めて、決定的な文化財を今の人間が勝手に変更する権利はなく、それが文化の本質だということに行き当たった。図面も写真もあり、材料も調達できるならば、昔のままのものを造る以外に選択肢はない。変更を加える権限は(現代の私たちには)なく、1、2階だけとか、最上階までとかいう議論にはそもそもならない。
-市長時代は「地階から1階までは」と言っていた。今更設置しないわけにはいかないのでは。
政治を43年もやっていると、どうしても福祉が優先され、文化は二の次になる。世代を超えた文化の普遍性、本物性に対する理解が甘かった。保守の思想で考えるなら、造れる場合は昔のものを造る。そこに人知は及ばない。
福祉との両立
-福祉がおろそかになるという批判がある。
福祉は守る。名古屋城の天守にエレベーターを付けなくても、バリアフリーの街は造れる。市内の大規模な建物に建築確認を出す際の正規メンバーに福祉の人を入れればいい。名古屋城を復元することが何で福祉を壊すことになるのか分からない。価値判断の問題。どちらかが正しいかではなく、どういう選択をするかだけの問題だ。
-天守に上がれる人と上がれない人が出てくるのは不平等では。
健常者も上がれないようにするのも一つ。元日とか特別な日を作って、その日は大学のウエートリフティング部にお願いして(障害のある人を)みんなで担いで上がるとか。防災面ではそっちの方が良い。エレベーターを造ると、火事になればみんな死んでしまう。人力なら助けられる。将来は技術が発達して、空飛ぶ車のようなもので上がれるようになるかもしれない。
名古屋城への思い入れ
-名古屋城に対する思い入れはいつから。
先祖が尾張藩で書物奉行だった。父親からそういう話を聞いて育った。小学校の写生大会で名古屋城に何回か行ったが、コンクリートでむなしいものだった。市長になって自信がない都市はいかんと思った。本物があれば市民の中に、街に対する自信が生まれる。
今後の展望
-そうした考えをどう届けていくか。
名古屋市の結論が「それ違うだろう」と思った場合は、衆議院議員として国に言いに行く。福祉と文化は共存してもええが、文化を壊しちゃいけない。
17日は、復元天守へのエレベーター設置を要望してきた障害者団体の関係者の思いをお伝えします。



