キツネと豊川いなり寿司を合体させた豊川市のご当地キャラクター「いなりん」。市観光協会職員の秋山峰輝さん(38)は、いなりんの「マネージャー」として県内外のイベントに足を運び、豊川の魅力を伝えている。手土産には、子どものころから食べてきた宝珠まんじゅうを選ぶことが多いという。味わいつつ、郷土への思いを聞いた。
宝珠まんじゅうの魅力
同市随一の観光名所・豊川稲荷(妙厳寺)の総門前に店を構えるのが、宝珠まんじゅうを製造販売する1947年創業の喜楽だ。店内で待ち合わせた秋山さんが早速、こしあんの小豆あんと昨年販売が始まった白あんを一つずつほおばる。
「うん、相変わらずおいしい。カステラ生地の良い香りと甘すぎないやさしい味。1パック4個入りも一人で全部食べちゃいます」と笑顔を見せる。
代表取締役の小川晴希さん(59)によると、宝珠まんじゅうは創業者で父の故晴次さんが82年に発売。「日持ちがして、豊川稲荷にちなんだお土産を作りたいと考えたそうです」。手のひらサイズの生地には、豊川稲荷の鎮守・豊川吒枳尼真天(だきにしんてん)が持つ宝珠をかたどる。「幅広い世代に好評」という控えめな甘さは、あんに練り込む米こうじが肝だ。豊川稲荷で毎月祈禱(きとう)を受けた米を使い、縁起の良さも喜ばれている。
人生の節目に携えて
秋山さんは豊川稲荷の近くで生まれ育ち、宝珠まんじゅうは親の帰省土産の定番だった。自身も高校生になると友人宅に、静岡県の大学に進学後はゼミの集まりに持参。「奥さんの実家に結婚のあいさつに行くときも持って行きました」と人生の節目でも選んだ。
協会職員になってからは、豊川のPRを助ける存在となった。県外のご当地キャラクターのイベントやインバウンド(訪日客)の商談会、県主催の物産展などで活躍する。「おまんじゅうに豊川らしさがしっかり入っているんですよね。渡して『生地のデザインは何ですか』と聞かれたところで、豊川稲荷という場所があって…と話が広がっていくんです」と語る。
地元への貢献
田舎過ぎず都会過ぎず、人が温かい-。豊川の良さをそう表現する秋山さんは2016年、「好きすぎる地元に貢献したい」との強い思いで協会職員になった。根底にあるのは、小学生のころの苦い体験だ。
習い事の合宿や家族旅行で訪れた東京や大阪。入った店の店員らから「どこから来たの?」と聞かれ、「豊川」と答えても分かってもらえなかった。「ああ、豊橋の隣ね」と言われることもあり、「僕の住んでいる所が伝わらないことが、小さいながらに悔しくって」と振り返る。
そんな思いを胸に、職員になった当初からいなりんのマネージャーを担当し、豊川を知ってもらおうと地道に活動してきた。スケジュール管理や商品開発の打ち合わせといった業務をさばきつつ、多いときは月5回ほど一緒にイベントに出向いて地元をアピールする。最近はいなりんの米粒が飛び出た後ろ姿が「かわいい」と評判で、うれしいことに声をかけられる機会も増えてきた。「いなりんを入り口に、豊川に興味を持ってもらえたら」と相乗効果への期待は大きい。
今後の展望
11月には、72年ぶりとなる御開帳が豊川稲荷で予定されている。「豊川を全国に広く知ってもらうチャンス」。今年も相棒のいなりんと、地元の認知度アップに奔走する。
喜楽は年中無休、午前10時~午後4時。豊川市門前町61。宝珠まんじゅうは1個170円。問い合わせは0533(86)9044。



