船上カメラマン・神野東子さん、漁師の覚悟と心意気を10年間撮り続ける
船上カメラマン神野東子さん、漁師の覚悟を10年撮影 (02.04.2026)

船上カメラマン・神野東子さん、漁師の覚悟と心意気を10年間撮り続ける

北海道釧路市出身の神野東子さんは、漁師の表情や海との命がけの向き合いを10年間にわたり撮影し続ける「船上カメラマン」として知られています。恵みをもたらし、時に牙をむく海と向き合う現場は、「うそのない世界」だと感じた神野さん。漁師は豪快なイメージがありますが、繊細さや柔和さを併せ持ち、「静けさをまとう迫力、覚悟、心意気」を一枚の写真に刻み込んでいます。

漁業との出会いと衝撃的な体験

神野さんは釧路に生まれながら、漁業との接点はなく、高校卒業後に地元を離れました。釧路に戻ると、フリーカメラマンとして広報紙や観光誌の撮影を請け負うようになります。2015年、秋サケ定置網の水揚げに立ち会った際、船頭に誘われて午前4時に沖へ出航。朝日に照らされ、船の揺れに合わせて網を引き上げる漁師の姿を見て、「自然とともに暮らす人間本来の姿を見た。この魅力をもっと伝えたい」との衝動に駆られました。

その後、道東沖を中心にタコ漁、コンブ漁、シシャモ漁などの現場に足を運び、全国トップクラスの水揚げ量を誇る釧路港のマイワシ巻き網漁船や、高知県のサンゴ漁にも同行。三重県の遠洋マグロ船を追い、スペイン・ラスパルマスへの遠征も経験しました。ある時、漁師に「まるで船上カメラマンだね」と冗談で言われたのをきっかけに、この肩書を名乗るようになりました。

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危険と向き合う覚悟と祈り

撮影中には、漁船から海へ転落した危険な体験もあります。夢中でレンズをのぞいていた際、うねりでバランスを崩し、すぐに引き上げられましたが、「板子一枚下は地獄」という言葉通り、漁師たちは仲間が波間に消えるなど、命がけの現場を語ります。神野さんは、漁師やその家族が神仏への祈りを絶やさないように、乗船前には神社への参拝を欠かしません。

日本の漁業を取り巻く現状は厳しく、津々浦々で漁師が減少しています。「この船に乗れるのは最後かもしれない」との思いがよぎることもあり、神野さんは「彼らの心意気まで失ってはいけない」と強く感じています。最近では、漁師が掲げる大漁旗にも関心を抱き、跳びはねる魚や波を鮮やかな色づかいで描いた旗を撮影。アートとして販売するブランドも始めました。

大漁旗を通じた漁業への関心向上

大漁旗には、大漁祈願だけでなく、陸で待つ家族の航海安全への願いも込められています。神野さんは、職人を訪ねて旗を撮影し、「大漁旗に込められた心意気を知る人がいれば、もっと漁業への関心が高まるはず」と確信しています。釧路を離れて接客などの仕事をしていた頃、自分に違和感を覚えたこともあった神野さん。殺伐とした社会で心を病む現代人に伝えたいのは、「自然と向き合い、自分が鏡に映る世界が、海にはある。人が人として生きる世界がここにはあるよ」というメッセージです。

神野東子さんの経歴と活動

神野東子さんは釧路市生まれで、高校時代は写真部に所属。大学卒業後、新千歳空港で航空会社のグランドスタッフとして勤務し、偶然出会ったカメラマンと意気投合して写真の道を意識するようになりました。これまでに東京・豊洲市場などで写真展を開催し、漁師の姿を広く伝え続けています。

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