奈良市の東大寺二月堂で行われる修二会(しゅにえ)、通称「お水取り」が、2026年3月15日未明に満行を迎えました。この伝統的な仏教行事は、11人の僧侶・練行衆(れんぎょうしゅう)によって、前行を含めて約1か月近くにわたり執り行われ、国家安泰を祈る様々な行法が続けられました。そして、1275回目という歴史的な行を無事に勤め上げることに成功しました。
燃えさかる松明で災いをはらう達陀の儀式
満行を迎える前日の14日未明には、燃えさかる松明(たいまつ)の炎の力で災いをはらう儀式「達陀(だったん)」が営まれました。練行衆は、火の化身「火天」や水の器を持った「水天」などの八天に扮し、香水(こうずい)や火の粉を礼堂(らいどう)にまいて空間を清めました。特に、燃える松明を持った火天は跳びはねながら水天と向き合い、松明を突き出しては礼堂の床に倒すことで、火の粉が飛び散る壮観な光景が展開されました。
練行衆の堂外退出と参拝者の見守り
15日午前4時半頃、全ての行を終えた練行衆は二月堂の外に出て、補佐役の童子(どうじ)らが持つ松明の明かりを頼りに石段を下りました。多くの参拝者が見守る中、彼らは麓の参籠宿所に戻り、長きにわたる祈りの行を締めくくりました。この瞬間は、1275年に及ぶ伝統の重みと、現代に生きる人々の信仰が交差する感動的な場面となりました。
子どもへの達陀帽いただかせで無病息災を祈願
同日午前10時頃からは、達陀で練行衆が使った帽子を子どもらにかぶせて無病息災を願う「達陀帽いただかせ」が行われました。信者らでつくる講社「朝参講(あさまいりこう)」の6人が、金色の刺しゅうが施された美しい帽子を子どもたちにかぶせていきました。家族らは、子どもが笑ったり、驚いて泣いたりする愛らしい様子を写真に収め、伝統行事を通じた祝福の瞬間を記録していました。
参拝者の声と伝統文化への思い
自身も幼い頃にこの帽子をかぶった経験があるという京都府精華町の市原凪乃さん(24歳)は、生後8か月の長男・綺海ちゃんらと共に訪れました。市原さんは、「日本の伝統文化を感じてもらいたかったです。優しい子に育ってほしいという思いと、世界平和への願いを込めてお参りしました」と語り、子育てと祈りを結びつける深い思いを明かしました。この言葉は、お水取りが単なる儀式ではなく、人々の生活や希望に根ざした生きた文化であることを示しています。
東大寺のお水取りは、752年に始まったとされ、千年以上にわたり途切れることなく続けられてきました。毎年3月に行われるこの行事は、国家安泰や五穀豊穣を祈るだけでなく、地域社会の結束や文化の継承にも重要な役割を果たしています。1275回目を迎えた今年の満行は、その歴史的意義を改めて確認する機会となり、多くの人々に日本の伝統行事の魅力を伝えました。



