岐阜・八百津町の老舗書店「司馬書店」、池井戸潤作品と杉原千畝関連書で地域に根差す
岐阜・八百津町の老舗書店「司馬書店」、地域に愛される存在

明治創業の老舗書店が地域に愛され続ける理由

岐阜県八百津町の中心部に位置する「司馬書店」は、文具なども扱う町の本屋として、地域の人々に長年親しまれてきた。1908年(明治41年)に曽祖母が洗剤や糸などを商う小間物屋として創業し、徐々に書籍も取り扱うようになり、昭和の初め頃には書店としての形を整えた。増改築は行われたものの、同じ場所で100年以上にわたり営業を続ける老舗である。

地元作家と歴史的人物の書籍に注力

同店では、八百津町にゆかりのある作品を積極的に取り揃えている。特に力を入れているのは、同県出身で直木賞作家の池井戸潤さんの作品だ。「下町ロケット」や半沢直樹シリーズなどで知られる池井戸作品は人気が高く、店内には作者のサイン色紙も飾られている。

また、「命のビザ」で知られる杉原千畝の関連書籍も充実させている。千畝は第二次世界大戦中、リトアニアの日本領事館領事代理として、ナチスの迫害から逃れるユダヤ系避難民にビザを発給した人物で、八百津町とは深い関わりがある。

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店主が薦める3冊の本

1. 「ハヤブサ消防団」(池井戸潤・著、集英社)

中部地方の架空の町「八百万町」を舞台に、田舎に移住して消防団に入ったミステリー作家が主人公の作品。消防団内の人間関係と、作中で起きる事件の謎に迫る展開が、池井戸作品らしい描写で描かれている。現在、続編も月刊誌「小説すばる」で連載中だ。

この作品は2023年夏にテレビドラマ化され、町名が似ている八百津町は池井戸さんの公認を得て町おこし事業「ハヤブサプロジェクト」を開始。2025年4月には、撮影セットや池井戸さんの生原稿、書籍などを展示する施設「ハヤブサ・ミュージアム」がグランドオープンした。

2. 「杉原千畝物語 命のビザをありがとう」(杉原幸子・杉原弘樹・著、金の星社)

千畝の生涯を描いたノンフィクションで、著者は妻の幸子さんと息子の弘樹さん。リトアニア日本領事館の領事代理としてナチスの迫害から逃れるユダヤ系避難民に「命のビザ」を発給した千畝の行動が、家族の視点でつづられている。

児童書として子ども向けに書かれているが、国際情勢の解説なども含まれており、千畝の事績を知るのに適した一冊だ。さらに詳しく知りたい方には、八百津町の人道の丘公園にある杉原千畝記念館も訪れることをお勧めする。

3. 「きまぐれロボット」(星新一・著、角川文庫)

星新一さんのSF短編集で、表題作をはじめ、ユーモアと風刺に満ちた傑作が収められている。現代はAI(人工知能)の発達が著しいが、過去に想像されていた人工知能との比較としても興味深い。短編集なので好きな話を好きな分量だけ読むことができ、読書の習慣がない人にも読みやすい。

本屋ならではの「偶然の出会い」の価値

店主の司馬範人さんは、「本は情報を得るもので、本質的にはインターネットと変わらないと思いますが、ページをめくることはまた別の体験だと思います」と語る。さらに、「本屋に足を運べば、想像もしていなかった本との出会いもあるでしょう」と、実店舗ならではの魅力を強調する。

地域から次々と本屋が姿を消す中、同店は飲食店や美容院などへ定期購読の雑誌を配達するサービスも行っている。パズル本が届くのを楽しみに待っている顧客もいるという。司馬さんは「地域から頼られる本屋として、できる限り続けていきたいと思います」と決意を新たにしている。

店舗情報

司馬書店

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  • 所在地:岐阜県八百津町八百津3887
  • 取り扱い:多彩なジャンルの書籍約2000冊
  • 営業時間:午前11時~午後7時
  • 定休日:日曜
  • 電話:0574・43・0113