深刻な人手不足に直面する日本で、外国人労働者は欠かせない存在となっている。しかし、言葉や習慣の違いから地域住民との摩擦が絶えず、社会の変貌を懸念する声も根強い。改正入管難民法が施行された1990年以降、「デカセギ」で来日した日系ブラジル人が地域の担い手となりつつある。本連載では、軋轢を乗り越え共生を目指す「ホーミー」(米国スラングで仲間たちの意)の姿を描く。
県営住宅での問題と自治会長の奮闘
愛知県西尾市にある「県営新渡場住宅」で自治会長を務めるワタナベ・マテウス・ハジメさん(42)は、日系ブラジル人3世。8年前にこの住宅に引っ越してきた。以前は派遣会社が用意したアパートに住んでいたが、家賃が1万~3万円台と安いことが決め手だったという。しかし、彼が住み始めた当時、この住宅では「ごみの分別」と「騒音」が深刻な問題となっていた。
ワタナベさんは振り返る。「音はね、カラオケをしたり、夜に音楽をかけたりしていました。新渡場住宅だけでなく、周辺の住民にも迷惑をかけていました」。記者が「どこの国の人だったのか」と尋ねると、ワタナベさんは「ブラジルとベトナムです」と苦笑いを浮かべた。
入居後まもなく、高齢で負担が大きそうな自治会長を手伝うようになったワタナベさんは、トラブル解決に奔走。住宅の集会場に集まった住民に対し、ポルトガル語、英語、ベトナム語の通訳を交えて「ここは日本なので、自分勝手なことをしてはいけません」と訴えた。住民からは「(あなたには)関係ない」「厳しすぎる」という声も上がったが、ワタナベさんは「ここはブラジルでもベトナムでもなく、日本です。日本のルールに従わなければなりません」と粘り強く説得した。
ゴミ問題への取り組みと成果
ゴミに関するトラブルも多発。分別が不十分なため収集してもらえず、ワタナベさんたちが自ら仕分けし直すこともあった。そこでワタナベさんは住民に分別方法を直接指導するとともに、市役所に依頼して定期的に「出前講座」を開催。今では騒音を立てたり、燃えるゴミと不燃ゴミを分別せずに捨てたりする住民はほぼいなくなった。
住民からの苦情は、昨年10月に「夜、鶏肉のミンチを作る音がうるさい」「駐車ルールを守らない人がいる」という2件があったのを最後に途絶えている。ワタナベさんの尽力が実を結び、共生への一歩が刻まれた。



