防府天満宮で約6000体の人形供養、厳かな儀式に様々な思いが込められる
山口県防府市にある防府天満宮で、回廊内にずらりと並べられた約6000体のひな人形や五月人形を前に、権宮司の鈴木英樹氏が厳かに祓串を振っておはらいする供養の儀式が執り行われました。学問の神様・菅原道真をまつる同天満宮は、近年では人形供養の神社としても広く知られるようになっており、この日は多くの人々の思いが込められた人形たちが集まりました。
20年前から続く人形感謝祭、供養依頼は年々増加
防府天満宮では以前から、亡くなった人の形見や飾る機会がなくなった人形などの供養を受け入れてきました。20年前に「梅まつり」を始める際に、「人形を供養したい人は多いはずだ」と考え、人形感謝祭もスタート。以来、毎年3月1日に実施されており、当初は100件前後だった供養依頼が徐々に認知度を上げ、今年は863件にまで増加しています。
同天満宮の関係者は「人形にはそれぞれの物語があり、大切にされてきた証です。供養を通じて、人形と持ち主の縁に感謝し、次のステージへ送り出すお手伝いができれば」と語っています。
交通事故で亡くした長女のひな人形、79歳の母が供養に訪れる
人形への思いは様々です。山口市秋穂東に住む主婦の松永扶実子さん(79歳)は、受け付け初日の2月11日にひな人形を入れた箱を大事そうに抱えて訪れました。このひな人形は、交通事故で亡くなった当時18歳だった長女のもので、それ以降ずっとしまい込んでいたものです。
松永さんは「娘が生きていれば、翌日が55歳の誕生日になるという日でした。これも何かのご縁。人形のことがずっと心に引っかかっていたが、ようやく供養してあげられる」と語り、涙をぬぐいながら段ボールを閉じました。長女を失った悲しみと共に過ごしてきた歳月が、このひな人形には込められていました。
防府天満宮では、こうした個人の深い思いに寄り添いながら、人形たちに感謝と別れを告げる儀式を続けています。約6000体の人形が並ぶ光景は壮観であり、同時にそれぞれの人生の断片が集まった空間でもあるのです。



