隈研吾氏設計の美術館がリニューアル 木材劣化でアルミ材へ異例の変更
栃木県那珂川町の馬頭広重美術館が大規模改修工事を完了し、リニューアルオープンを果たした。世界的建築家・隈研吾氏が設計したこの美術館は、特徴的な木製ルーバー(羽板)が劣化したため、維持費を考慮してアルミ材への変更という異例の対応が取られた。
広重の「雨」から着想を得た特徴的なデザイン
馬頭広重美術館は、東海道五十三次で知られる江戸時代の浮世絵師・歌川広重らの作品を展示する町立施設である。新国立競技場をデザインした隈研吾氏が設計を担当し、総工費12億円をかけて2000年に開館した。
建物の最大の特徴は、地元産の八溝杉を細く切って制作した木製ルーバーが全面を覆うデザインである。このデザインは広重が線で描く「雨」から着想を得たもので、隈氏はこの作品で建築界の権威ある村野藤吾賞を受賞。代表作の一つとして国内外で高い評価を得てきた。
木材劣化と維持費の問題が浮上
しかし、開館から約20年が経過した2020年頃から、直射日光と風雨にさらされた屋根部分の木製ルーバーを中心に腐食が進行。破損が目立つようになり、館内の一部では雨漏りも確認されるようになった。
隈氏は「当初から20~30年で木製ルーバーを取り換えることが想定されていた」と説明。地元林業の振興や経済循環を考慮し、旧馬頭町側もこの計画を了承していたという。当時の技術で耐火・防腐処理を施していたものの、劣化は予想の範囲内で、全面的な取り換えが前提となっていた。
町は2024年2月に大規模改修を決定し、改修設計も隈氏の事務所に依頼。当初は新しい木製ルーバーへの交換を検討していたが、試算では「木製の場合、10年に1回の防腐剤塗り直しや部材交換に約6500万円かかる」という結果が明らかになった。
アルミ材への変更という決断
維持費の問題を受け、町は方針を転換。屋根部分を覆うルーバーをアルミ材に変更することを決定した。アルミ材の表面には木目調のプリントが施され、外観は従来とほぼ変わらない仕上がりとなっている。
木材をふんだんに使用することが隈氏のデザインの特徴であることを考慮すると、アルミ材への変更は異例の対応と言える。建物側面に設けられるルーバーについては、引き続き検討が進められている。
記念式典で隈氏が感慨
3月14日に開催された記念式典で、隈研吾氏は「私にとって大切な建物であり、ここは私の原点でもある」と述べ、改修完了の喜びを語った。さらに「世界からたくさんの人々に訪れてもらえることを心から願っている」と期待を込めた。
馬頭広重美術館のリニューアルは、歴史的建造物の維持管理における現実的な課題と、デザインの継承という難しいバランスを考える機会を提供している。地元那珂川町では、今後も美術館が地域の文化拠点として発展していくことが期待されている。



