伝統の火をともし続ける兵庫・川西の一庫炭づくり
兵庫県川西市最北部に位置する黒川地区で、伝統的な「一庫炭(ひとくらずみ)」の製造が現在も続けられています。この地域では、室町時代から炭焼きが盛んに行われてきましたが、電気やガスの普及に伴い需要が減少。昭和30年代には約40軒あった炭焼き農家は、現在では今西学さん(54歳)の一家だけとなっています。
菊の花のような美しい断面が特徴の高級炭
一庫炭は、付近の里山に生育する良質なクヌギを原料として焼き上げられます。焼成後の断面が菊の花びらのように見えることから「菊炭」とも呼ばれ、茶道用の高級品として特に重宝されています。火付きと火持ちの良さが特徴で、茶の湯の文化を支える重要な素材となっています。
今年の製造作業は1月下旬にスタート。広さ約6畳ほどのドーム形の窯に、長さ1メートルの原木を丁寧に並べ、3日間かけて焼き上げました。その後、煙突を塞いで密閉状態にし、火を消して4~5日間蒸し焼きにする工程を経ます。
約100度の窯の中での「窯出し」作業
「窯出し」と呼ばれる工程では、約100度という高温の窯の中に作業員が入り、落ち着いた質感の炭を手際よく運び出します。今年は若木が多く材料として使用されたため、見た目が特にきれいに仕上がっているとのことです。
今西さんはこの伝統の技について、「木を切り、手入れをすることで里山の保護につながります。炭焼きの火を消さずに続けることが、茶道文化を守ることにもつながればと願っています」と語っています。作業は5月上旬まで続けられる予定です。
一庫炭づくりは単なる伝統工芸ではなく、里山の生態系保全と地域文化の継承を両立させる貴重な取り組みとして注目されています。現代社会においても、その価値は色あせることなく、未来へと受け継がれていくことが期待されています。



