輪島の和更紗職人、被災後初の個展を銀座で開催
能登半島地震と能登豪雨により甚大な被害を受けた石川県輪島市在住の和更紗職人、中野史朗さん(51)が、被災後初めてとなる個展を東京都中央区銀座の呉服店「銀座もとじ和織・和染」で15日から17日までの3日間、開催する。地震で自宅と工房が倒壊した中、奇跡的に無事だった商売道具を活用し、震災を乗り越えて制作を続けてきた中野さんの新作10点が展示される。
和更紗とは
和更紗は、複数枚の型を用いて多色染めを行う日本の伝統的な染色技術である。千葉市出身で伝統工芸に強い関心を抱いていた中野さんは、建築事務所を退職し、26歳で東京都内の江戸小紋と更紗の工房に就職。その後、制作に欠かせない「伊勢型紙」の技術を習得し、2014年に独立した。当初は港区東麻布に工房を構えていたが、立ち退きを余儀なくされ、工芸王国として知られる石川県に憧れて2019年11月に輪島市へ移住した。
震災と復興への道のり
移住後は地元住民の温かい支援に支えられ、奥能登地域での生活にすっかり溶け込んでいた中野さん。しかし、2024年元日に発生した能登半島地震により、工房の壁は崩れ落ち、母屋も傾斜し、いつ倒壊してもおかしくない危険な状態となった。染色に不可欠な長さ7メートルの長板の状態が気がかりで、周囲の制止を振り切り、翌朝自宅に侵入して確認したところ、6枚すべてに大きな損傷はなく無事だった。町は周辺道路が寸断されて孤立し、避難所生活を強いられた。同年に「もとじ」での個展を予定していたが、延期を余儀なくされた。現在は金沢市の仮設住宅で生活しながら、別のアパートを借りて工房とし、活動を再開している。
発災後しばらくは、復旧作業に携わる人々の支援が落ち着くまで、仕事に専念できなかった。中野さんは「伝統工芸は平和だからこそ成り立つものだ」と痛感したという。再開に踏み切れたのは、作品を待ち望む人々の存在があったからだ。「作品を待ってくれる人がいるのは幸せなこと。恩返しのために続けるしかない」と語り、「できるだけ早く奥能登で工房を再建したい」と強い決意を示している。
個展の見どころ
個展では、中野さんがデザインした新作10点の帯や着物が出展される。「銀座もとじ」の泉二弘明会長(76)は「中野さんの作品は色使いがモダンで、現代の街並みに調和する。待ってでもうちで個展を開いてもらいたかった」と期待を寄せる。また、「伊勢型紙を使った更紗は中野さんにしか作れない。伝統工芸に携わる若者を応援したい」と話している。中野さんは15日は午後1時から午後6時、16日と17日は午前11時から午後6時まで会場に在店する予定。



