銀座の地下に妖しく光る文壇サロン「十誡」、書物と酒で紡ぐ現代の文化空間
銀座地下の文壇サロン「十誡」、書物と酒で文化を継承

銀座の地下に広がる妖しい書物の世界

重厚な扉をゆっくりと開けると、そこには妖しい光に包まれた空間が広がっていた。照明を落とした室内では、赤い革のビンテージソファが柔らかな輝きを放ち、金の調度品や人形が壁一面に並ぶ本と共に、独特の雰囲気を醸し出している。この場所は、東京・中央区銀座5丁目にある地下の秘密のバー「Book Café&Bar 十誡」である。

好事家の書斎をコンセプトに

2015年に「好事家の書斎」をコンセプトとして誕生した「十誡」。その印象的な店名は、モーセの十戒に由来している。店長の藤原織香さん(34)は微笑みながら語る。「ここの本は少し特殊で、趣味の偏ったものばかりです。お客様同士で相手の嗜好を否定せず、踏み荒らさないという店の決まりを、十の戒律になぞらえました」。

書架には珍本や奇本を含む個性豊かな約3000冊が整然と並んでいる。三島由紀夫の文学全集から映画や音楽の本、写真集、さらには妖怪や魔術系の書籍まで、多様なジャンルが揃う。澁澤龍彦や寺山修司ら作家別のコーナーも設けられており、趣向に富んだアングラな図書室の様相を呈している。

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貴重な書籍が揃う至福の空間

店内には貴重な本も数多く収蔵されている。太宰治の「人間失格」は、1948年(昭和23年)発行の初版本に加え、直筆原稿を複写して本にしたものも存在する。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」も年代や装丁の異なる複数の版が揃えられており、訪れた客は酒を片手にそれらをめくりながら、至福の時を過ごすことができる。

銀座という土地柄から、作家や映画監督、アーティストなど多くの文化人が訪れる。一人でふらりと立ち寄る人もいれば、複数人で現れて作品について語り合う人も多い。まさに現代の文化人たちのサロンとして、人々が集う場所となっている。

文壇バーの伝統を継承

昭和初期には、作家や出版関係者が酒を酌み交わしながら議論を交わす店が栄えた。それらは文壇バーや文壇サロンと呼ばれ、文化の一翼を担ってきた歴史がある。「十誡」は約150種類のウイスキーと約30種類のアブサンを自慢としており、大人の社交場としての役割を果たしている。さらに、文豪の作品にちなんだカクテルを月ごとに創作するなど、伝統を現代に継承する試みも続けられている。

藤原さんは語る。「人と人とが交流し、情報を交換できるのがバーの良いところです。先人たちが残してきたものを、こうして次の時代に継承していく。それが心の豊かさにつながるのではないでしょうか」。愛すべきは酒と文化、そして人の心。銀座の地下に位置するこの文壇サロンでは、今宵も会話の花が咲き続けている。

【Book Café&Bar 十誡】
所在地:中央区銀座5の1の8 銀座MSビル地下2階
アクセス:丸ノ内線銀座駅から徒歩2分
電話:03(6264)5775
営業時間:カフェタイム 午後3時〜6時(土日祝は午後1時半〜)、バータイム 午後6時〜11時(日・月末最終日は午後6時半〜10時半)
定休日:月曜日・火曜日

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