スモーキングルーム第140回:金ボタンの葛藤と家族の分断、煙との対話で見える希望
スモーキングルーム140回:金ボタンの葛藤と家族の分断

スモーキングルーム第140回:金ボタンの心の揺らぎと煙との意味深い対話

千早茜による連載小説「スモーキングルーム」の第140回が公開された。物語は、金ボタンが父親から突然、革命的なビラの配布を命じられる場面から始まる。父親は「なんで俺に教えてくれない」という金ボタンの問いかけに、「今はそれどころじゃない」と早口で応じ、濡れたインクの匂いがする紙を押しつけたのである。

その紙には、赤い矢が王冠を貫く絵が描かれており、金ボタンが父たちの労働者新聞で何度も目にしたものだった。さらに、歪に傾く風車のような十字も矢で貫かれており、これは隣国の軍人たちの赤い腕章に刺繍されていた模様と同じである。ビラには「自由を!」や「我々の国は我々の手で!」といった文言が記され、金ボタンの家に書かれた落書きとも一致していた。

父親の主張と金ボタンの困惑

父親は興奮した口調で語りかける。「仲間たちも釈放された。我々は体制側とも手を組んで闘う。いいか、いま排除すべきは彼らじゃない、分断を煽動している隣国の奴らだ」。彼が指し示す先には、窓を割られ、汚物や泥で汚された家々が並んでいた。壁には黄色いペンキで「J」と書き殴られており、金ボタンが幼い頃に世話になった家も含まれていた。

かつて腹を空かせた金ボタンに夕飯を食べさせてくれた家や、臥した母親の代わりに末のきょうだいに乳を飲ませてくれた女性の家も、今ではそのような状態にあった。呆然とする金ボタンの肩に、父親の手が置かれる。「同志よ」。しかし、それは金ボタンが望んでいた言葉ではなかった。彼は紙を地面に叩きつけ、その場から走り去ったのである。

煙との対話で見える希望の光

走り去った金ボタンは、ホテルの煙に思いを打ち明ける。「俺の家族はばらばらだよ」。煙は目を伏せて「そうか」と呟くと、針金のことを指す「彼」の言葉を引用して語り始めた。「彼が言っていた。ホテルには誰も留まらない。客も、働く人間も、ひとときを過ごして去っていく」。そして、ほほえみながら続ける。「けれど、ホテルには人々の時間が積もっている。僕らはその中で同じ時を過ごすんだ」。

金ボタンは「お前らの話はいつもわからねえよ」と力なく笑うが、煙との対話は、変化という不安から目を背けられる唯一の時間だった。傍らでは、ジャム瓶が肥えた体を丸めてほとんど眠りについている。この瞬間、金ボタンは複雑な感情の中で、わずかな安らぎを見いだすのである。

物語は、政治的な緊張と個人的な葛藤が交錯する中で、家族の絆や人間関係の儚さを浮き彫りにしている。千早茜の繊細な筆致が、登場人物たちの内面の揺らぎを鮮やかに描き出している。