FC東京の練習場移転計画が調布市と小平市に大きな波紋を広げる
サッカーJ1のFC東京が、現在の練習拠点である小平市から、ホームスタジアムである味の素スタジアム近くの「調布基地跡地留保地」への移転計画を進めている。この計画は2028年度の利用開始を目指しており、調布市が主導する大型事業として注目を集めている。しかし、移転先の調布市では歓迎の声が上がる一方で、一部の市民からは「地元軽視」との強い反発も生じており、地域社会に複雑な感情を引き起こしている。
調布市の大規模整備事業とFC東京の期待
調布市は昨年8月、FC東京の試合直前のスタジアムで移転整備事業を発表した。計画では、約6ヘクタールの未利用地に天然芝フィールドや広場、クラブハウスなどを設置するイメージ案が示された。この事業はFC東京の利用だけでなく、市民スポーツや災害時の活用も想定しており、多機能な拠点としての役割が期待されている。
調布市によると、2026年度には基地留保地の整備事業に40億2300万円を計上し、用地取得や造成工事を進める方針だ。建物整備などの詳細な費用については、長友貴樹市長が「2026年度に検討する」と説明しており、FC東京の負担額も「今後定める」とされている。サポーターからは歓迎の声が多く、FC東京は「地域に必要とされる存在を目指す」とコメント。チームの中心選手である長友佑都選手もこの話題に触れるなど、関係者は前向きに受け止めている。
小平市の衝撃と地域との深い絆
一方で、突然の発表に驚きを隠せないのが現在の練習拠点がある小平市だ。市役所のロビーには「FC東京小平グラウンドへ行こう」と書かれたパネルが掲示され、市内にはチームのキャラクター像やマンホールが設置されるなど、長年にわたって地域と深く結びついてきた。関連イベントも頻繁に開催され、市民から親しまれてきた経緯がある。
昨年9月の小平市議会では、市議からFC東京との関係強化を求める声が上がった。市側は連携事業を縮小する考えはないと説明したが、小林洋子市長は移転計画について「私も衝撃を持って受け止めた」と述べ、地域への影響を懸念する姿勢を示した。小平市にとって、FC東京の移転は単なる施設の移動ではなく、地域コミュニティの一部が失われる可能性を意味している。
調布市民の不信感と「地元軽視」の批判
調布市では、一部の市民から計画の進め方に対して強い不信感が表明されている。関係者によると、市と財務省の間では発表前から協議が行われていたが、地元住民には事前に情報が共有されなかった。このため、住民グループが市に問い合わせるなどして独自に情報を収集する事態となった。
調布市議会でも、市議らが住民の懸念をただしたが、納得のいく回答が得られなかったという。批判の焦点は、整備事業による自然環境や生活への影響、そして主に市民が利用すべき公園の公共性にある。一部の市民は「市民軽視」と指摘し、計画の透明性や地域への配慮を求めている。
調布基地跡地留保地の歴史と活用の経緯
調布基地跡地留保地は、1976年に在日米軍から返還された国有地で、長らく「当分の間、処分を留保する」とされてきた未利用地だった。国が活用を認める方針に転換したことを受け、調布市は2008年に「防災・スポーツレクリエーション機能を有する公園」としての活用計画を策定した。しかし、他の大型事業が優先されたことなどから、計画は思うように進んでいなかった経緯がある。
今回のFC東京の移転計画は、この長年放置されてきた土地の活用を促進する契機となる可能性がある。一方で、地域住民の意見を十分に反映させずに進められたことから、賛否が分かれる状況が生まれている。調布市と小平市の両方で、今後の協議や調整が注目される。



