東日本大震災15年、詩に託す無念と悲しみ 双葉町出身・北村雅さんが詩集出版
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から、2026年3月11日で15年を迎える。この節目に、福島県双葉町出身で現在は栃木県小山市で暮らす北村雅(ただし)さん(70)が、詩集「ふるさとを奪われて」を出版した。語り部として活動する北村さんは、口では伝え切れない思いを詩に込め、未来の世代へ向けたメッセージとして発信している。
「ふるさとを奪われた」原発事故避難者の心情
詩集の表題作には、原発事故によって故郷を追われた避難者の深い悲しみと無念さがにじんでいる。「戻してくれませんか あの自然を ゆったりした時間を かけがえのない生活を」「ふるさとを捨てたわけではない ふるさとを奪われたのですから」という言葉は、強制避難を余儀なくされた人々の心情を鮮明に映し出している。
収録された22編の詩のうち、15編が故郷への思いを綴った作品だ。北村さんは「語り部として話せる時間には限りがあるが、活字は朽ちない」と語り、詩集を通じて避難者の実態と心情を後世に伝えたいという強い思いを明かした。
震災当日から続く避難生活の記憶
2011年3月11日の震災発生時、北村さんは双葉町のデイサービスセンターで高齢者のケアに従事していた。津波は施設の200メートル先まで迫り、翌12日の原発建屋の水素爆発と放射能汚染によって、全町民が避難を強いられる事態となった。
高齢者を連れて福島県川俣町、郡山市、埼玉県へと避難を続け、家族とともに小山市に落ち着いたのは同年4月になってからだった。この経験が、北村さんの詩作活動の原点となっている。
故郷との決別を刻む「解体記念日」
2020年に地元紙で取り上げられ、本格的な詩作のきっかけとなった作品「解体記念日」は、前年に自宅が解体された時の記憶をたどり、故郷との決別を胸に刻んだ日を「記念日」と名付けた。この作品は、物理的な家屋の消失だけでなく、生活の基盤そのものが失われる喪失感を伝えている。
また、2022年8月に町の一部で避難指示が解除された際の心情を吐露した「移住者は」では、「そんな簡単に帰還を決められない現実が横たわる」と複雑な思いを綴りながらも、「寝静まった夜甦ってくるふるさと」と揺れる心情を言葉にしている。
薄れゆく記憶と未来への警鐘
詩集には、子どものころの町の思い出や全国に散らばった旧友への想い、薄れゆく事故の記憶と危機感、さらには能登半島地震の被災者に向けたメッセージも収められている。北村さんは「人災という側面もある複合災害で、実態はなかなか伝わりにくい」と指摘し、詩集を通じて避難者の心情が少しでも多くの人に届くことを願っている。
震災前、双葉町には約7100人が暮らしていたが、現在の居住者は約200人にまで減少。原発事故特有の難しさが復興の道のりに影を落としている。
詩集の頒布と講話・展示会の開催
詩集「ふるさとを奪われて」は1冊1500円で、郵送による頒布が行われている。購入希望者は北村さん(電話090-5840-3405)まで連絡が必要だ。
また、東日本大震災と福島第一原発事故の記憶を伝える講話&展示会「忘れていませんか?東日本大震災・原発事故から15年」が小山市民ギャラリー「まち美」(中央町2)で開催されている。3月15日まで入場無料で、3月11日午前10時からは北村さん自身が体験を語る講話が行われる予定だ。会場では詩集の頒布も実施される。



