熱海土石流訴訟で遺族が悲痛な証言「両親とふるさとを返してほしい」
2021年7月に発生した静岡県熱海市伊豆山の土石流災害をめぐり、遺族と被災者らが県と市、崩れた盛り土があった土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が21日、静岡地裁沼津支部で開かれた。証人尋問では遺族と被災者の計9人が出廷し、5年近くが経過しても癒えない心の傷を赤裸々に語り、「父や母、ふるさとを返してほしい」と悲痛な訴えを展開した。
「大きな雨音が今でも怖い」 自宅全壊の被災者の証言
土石流で自宅が全壊した太田滋さんは、証人尋問で「大きな雨音が今でも怖い」と語った。家屋を失ったことで、古文書や掛け軸など貴重な資料も流失したという。太田さんは「伊豆山の歴史や文化を後世に伝える資料を失った。亡くなった命と同様、取り戻すことができない」と強調し、文化的損失の大きさを訴えた。
発生直前の動画で母の最期を振り返る男性
土石流で母親(当時69歳)を亡くした45歳の男性は、発生直前に母から届いた短い動画の内容を明かした。動画には、泥水が流れ、流木やゴミが流れる現場の川の異変が映っていたという。「ただごとではない」と感じた男性は必死に母を捜したが、12日後に無言の対面となった。
男性は「土石流は危険な盛り土の造成者、それを知りながら止められなかった行政による『人災』と思う」と振り返り、「避難警報や指示が早く出ていれば助かる命があった。被告には過失を認めてほしい」と強く訴えた。
遺族と被災者9人が「人災」として過失を指摘
証人尋問に立った遺族と被災者らは、以下の点を共通して訴えた。
- 行政の対応の遅れ:避難警報や指示が迅速に出されていれば、被害を軽減できた可能性がある。
- 盛り土の危険性の認識:土地所有者や行政は危険性を認識しながら適切な対策を講じなかった。
- 心の傷の深さ:5年近く経っても、恐怖や悲しみが癒えず、日常生活に影響が続いている。
訴訟では、県と市、土地の現旧所有者らが被告となっており、遺族と被災者側は計約5億円の損害賠償を求めている。次回の口頭弁論は6月に予定されており、被告側の反論が注目される。
この災害では、2021年7月3日の土石流で27人が死亡、1人が行方不明となる大惨事となった。地元では復興が進む一方、遺族や被災者の心の傷は深く、訴訟を通じた真相解明と責任の所在が求められている。



