三重県鈴鹿市の白子漁港で4月24日、軽乗用車が海に転落し、沈みかける車内から30代男性を救出した漁師2人に、県警鈴鹿署と鈴鹿市消防本部から感謝状が贈られた。救出にかかった時間はわずか約5分。署員や消防職員も「これほど切迫した状況での人命救助は聞いたことがない」と驚く、勇敢な行動と偶然が重なった救出劇だった。
事故の発生
事故は午前8時50分ごろ、鈴鹿市白子町の新紅屋橋北側の白子漁港内で発生。30代男性が運転する軽乗用車が堤防の境界を見誤り海に転落し、車は前方から沈み始めた。
漁師の迅速な対応
当時、漁師の松林勝一さん(54)はトリガイ漁を終え、市場を待ちながら現場から約100メートル離れた堤防でトリガイをむいていた。突然「ドン」という大きな音を聞いて振り返ると、車が半分ほど海に沈んでいたという。松林さんは「レスキューを待っていたら助からん」と判断。偶然近くにエンジンがかかる状態で係留されていた同業者のボートを見つけ、持ち主に断る間もなく、一緒にいた仲間の漁師と2人で現場へ向かった。
約3分で到着すると、車内から男性がドアをたたいて助けを求めていた。松林さんはハンマーで窓ガラスを割ろうとしたがうまくいかず、力任せにドアをこじ開けた。仲間の漁師がドアを押さえる中、松林さんが男性の脇を抱えてボートへ引き上げた。直後、車は「ボコボコ」と音を立てながら海中へ沈んでいった。
偶然の要素
救出には偶然も重なった。松林さんは当初119番しようとしたが、慌てて発信ボタンを押し忘れていたという。「あの時ボタンを押して、救助を待っていたら男性は死んでいたかもしれない」と振り返る。救出後に通報し、8分後に救急隊が到着した。
感謝状の贈呈
今月上旬、同市の漁業協同組合で開かれた感謝状の贈呈式には、鈴鹿署の林忠雄署長と市消防本部の橋本靖彦消防長が出席。「迷わず感謝状の贈呈を決めた。勇敢な行動に感謝したい」とたたえた。松林さんは「もし助けられず、車が沈んでいく姿を見ることになっていたら。無事に助けられてほっとした」と話した。



