危険運転致死傷罪の要件見直し法案が閣議決定 数値基準導入で処罰範囲拡大へ
政府は3月31日、特に危険で悪質な運転を処罰する危険運転致死傷罪の要件を見直す自動車運転死傷処罰法の改正案を閣議決定した。新たに数値基準を導入することで、これまであいまいだった適用要件を明確化し、処罰範囲を拡大する方針だ。法務省は今国会での成立を目指しており、2026年3月の施行を予定している。
飲酒運転と高速度運転に具体的な数値基準を設定
改正案では、飲酒運転と高速度運転について、以下のように具体的な数値基準を設けた。
- 飲酒運転: 呼気1リットルあたりのアルコール濃度が0.5ミリグラム以上の場合を「正常な運転が困難」な状態と定義。これはビール大瓶2本に相当する量とされる。
- 高速度運転: 最高速度が時速60キロ以下の道路では50キロ超過、60キロを超える道路では60キロ超過を基準。例えば、一般道(制限速度60キロ)では時速110キロ以上、高速道路(同100キロ)では時速160キロ以上で死傷事故を起こした場合が対象となる。
さらに、基準を時速10キロ下回る範囲内の速度でも、状況に応じて適用される可能性があることが明記された。これにより、「重大な交通の危険の回避が著しく困難な高速度」という新要件と合わせて、より厳格な対応が可能となる。
ドリフト走行など危険行為も対象に追加
今回の改正では、意図的にタイヤを滑らせたり浮かせたりする運転、いわゆる「ドリフト走行」や「ウィリー走行」で死傷事故を起こした場合も、危険運転致死傷罪の対象に加えられた。公道でのこうした行為が、重大な危険を招くとして規制強化が図られる。
遺族の声と法改正の背景
危険運転致死傷罪は最高刑が拘禁刑20年と、過失運転致死傷罪の同7年より重いが、要件があいまいなため、危険運転とすべきケースでも過失運転が適用されることが多かった。これに対し、事故遺族らが長年見直しを求めてきた経緯がある。
ある遺族は「数値基準の導入には納得いかない面もあるが、一歩前進だ」と複雑な思いを語る。3人の子を失った母親は、より厳格な運用を期待している。法務省は、今回の改正で処罰の公平性と実効性を高めると説明している。
道路交通法も同時改正 酒酔い運転の数値基準を統一
同日、道路交通法の改正案も閣議決定された。道交法では、酒酔い運転の要件として、呼気1リットルあたりのアルコール濃度「0.5ミリグラム以上」という数値基準を新設。飲酒による危険運転の数値基準と整合性を図り、法体系の一貫性を確保する。
政府は、これらの改正により、交通事故防止と被害者救済の強化を目指す。今後、国会審議を経て早期成立が期待されるが、現場での慎重な運用が求められる声も上がっている。



