熊本・八代市新庁舎汚職事件、復興の象徴が舞台に
熊本・八代市新庁舎汚職事件、復興の象徴が舞台に

熊本県八代市の新庁舎建設をめぐる汚職事件

熊本県八代市の市庁舎建て替え工事をめぐり、市議ら3人があっせん収賄容疑で警視庁などに逮捕された。この新庁舎は、2016年の熊本地震で被災した旧庁舎に代わるもので、「復興の象徴」と位置づけられていた。しかし、建設には多額の国の資金が投入され、その事業が一部の関係者によって食い物にされていた構図が浮かび上がっている。地震から10年という節目に発覚した汚職に、地元住民からは強い批判の声が聞かれる。

人口減少の中での巨大庁舎

八代市の人口は約11万8000人に減少しているにもかかわらず、新庁舎の延べ床面積は旧庁舎の2倍以上に拡大した。市内で長年喫茶店を営む出水晃さん(81)は、「大きすぎる庁舎だと感じていた。事件になり、やっぱりかという思いだ」と語る。出水さんの店は1967年に開業し、熊本地震で半壊したが、新庁舎については「復興の象徴というが、市民目線で整備されたとは思えない」と疑問を呈する。

事件の構図

捜査関係者などによると、2016年ごろ、建設会社「園川組」の代表取締役・園川忠助容疑者(61)が、前田建設工業の当時の九州支店長に市庁舎建て替え計画を伝え、有力な地元市議である成松由紀夫容疑者(54)を紹介した。園川容疑者と成松容疑者は日本大学の先輩後輩の関係で、園川組は前田建設の下請け企業でつくる「前友会」の一員だった。前田側から園川容疑者を通じて便宜を図るよう依頼を受けた成松容疑者は、2019年6月ごろ、前田側が作成した評価基準案を当時の副市長に渡し、採用を働きかけた。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

2019年7月に公告された入札では、前田建設が筆頭となる共同企業体(JV)だけが参加し、118億円で落札。落札率は99.92%という高さだった。契約変更や付帯工事により、前田建設が受け取る額は2021年6月から2022年1月にかけて計約13億円増額され、園川組は下請け工事を受注した。成松容疑者は前田側に見返りを要求し、同社九州支店の2人が2021年6月ごろ、園川容疑者が指定した元市議・松浦輝幸容疑者(84)宅までスーツケースで現金6000万円を運び、3容疑者に渡したとされる。

内部告発と「天の声」

入札をめぐる不正の疑いは、市職員の内部告発で明るみに出た。市議会は調査特別委員会(百条委員会)を設置し、複数の市職員が、前田建設作成の評価基準案について、上司から「天の声」として採用を指示されたと証言した。これに対し、成松容疑者ら自民党市議団は「事実無根」「でっち上げだ」と反発し、百条委で証言した市職員らを名誉毀損や偽証の疑いで告訴すると述べた。一方、前田建設は内部調査の上、今年1月に警視庁に情報提供し、捜査に協力している。

国費の投入と市民の負担

市庁舎の総事業費は付帯工事を含めて171億円に上り、そのうち124億円は国の災害復旧事業債で賄われた。つまり、建設費用は八代市民だけでなく、広く国民が負担している。出水さんは「一部の議員らが力を誇示したかっただけではないか。行政サービスがしっかりしていれば、立派な建物なんていらなかったのに」と話す。

逮捕容疑の詳細

警視庁と熊本県警の合同捜査本部は7日、成松、松浦、園川の3容疑者を逮捕した。逮捕容疑は、2016年から2019年6月ごろにかけて、前田建設の九州支店社員から、新庁舎の建設工事について、価格や技術などの評価点で落札者を決める「総合評価方式」を採用し、同社など3社のJVが落札できるようにしてほしいとの依頼を受け、同社が作成した評価基準で入札を実施することや、同社の工事利益を約11億円増やすことを市職員に指示し、見返りとして6000万円を受け取ったとされる。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ