日向市議会が定数半減・報酬1.7倍案を拒否 審議会の大胆答申が白紙に
日向市議会が定数半減・報酬1.7倍案を拒否 (29.03.2026)

日向市議会が大胆な定数半減・報酬引き上げ案を拒否

宮崎県日向市議会(定数20)の定数を10に半減し、議員報酬を1.7倍に引き上げるという大胆な答申が、市議会によって「受け入れない」と拒否され、実現が困難な状況となった。この答申は、市特別職報酬等審議会が昨年秋にまとめたもので、議員数を削減する代わりに報酬を上げて議会の活性化を図る狙いだった。しかし、報酬改定を議論する審議会が定数見直しまで踏み込んだことに、市議会側から強い拒否感が広がった。

審議会の答申内容と市議会の反応

審議会が西村賢市長に答申したのは昨年10月。内容は、定数を現行の20から10に削減し、報酬を月額35万8000円から60万円に引き上げるというものだった。これにより、定数は人口約2100人の椎葉村と同じになり、報酬は県都・宮崎市の58万3000円を上回る水準となる。答申を受け、日向市議会は議長を除く議員19人で構成する調査特別委員会を設置し、3回の会合を開いて是非を検討した。

23日の市議会本会議で、特別委員会の小林隆洋委員長は「答申内容は不適切であり、受け入れがたいとの結論に至った」と述べ、反対の姿勢を明確にした。市議会事務局によれば、議会の定数や議員報酬は市の条例で定められており、条例改正には議会の議決が必要なため、答申内容は事実上白紙に戻された。

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議論の焦点:審議会の役割と条例の範囲

議論のポイントとなったのは、審議会が担う役割についてだった。特別委員会が意見を求めた熊本大学の伊藤洋典教授(政治学)は、審議会が答申で報酬の見直しだけでなく定数にまで踏み込んだ点に異論を唱えた。市の条例では、審議会の設置について「市長の諮問に応じ、議員報酬等の額について審議するため」と定めている。伊藤教授はこの点に触れ、「報酬以外の事項を答申に盛り込むことは条例の範囲を逸脱している」と指摘した。特別委員会はこの指摘に沿って「受け入れない」との結論を出した。

日向市の議員報酬が最後に改定されたのは1996年。その後、近年の物価高騰などを背景に、市議会は報酬改定の検討が必要として2024年12月、市長に審議会での議論を求めていた。市議の一人は審議会の答申について「まさか定数にも言及するとは思わなかった」と驚きを隠さず、「議員は地域の代表。報酬は物価高騰などの社会情勢を踏まえて適正な額を考えるべきで、両方とも極端すぎる」と語った。

審議会の意図と専門家の見解

審議会は地域団体や企業の代表ら10人の民間人で構成される。西村市長から諮問を受けて行った今回の答申に向けては、昨年7月から5回の会合を開催。協議では、報酬の一定の増額はやむを得ないものの、現行の定数では市の財政負担に直結するとして、定数削減も審議対象にしたという。

審議会の会長を務めていたのは、昨年10月まで日向商工会議所会頭だった三輪純司さん(76)。運輸業「八興運輸」の会長である三輪さんは、コンパクトシティーとして知られる米ポートランドを視察した経験を振り返り、「ポートランドでは少人数の議員しかいない。日向でも少数精鋭でしっかりと働いてもらい、生産性を上げることは可能だ」と主張する。また、普段の議員活動が市民に見えていないことへの不満も述べ、特別委員会の結論には「市民代表として協議した審議会の総意を簡単に否定するのはどうなのか」と疑問を投げかけた。

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一方、鹿児島大学の平井一臣名誉教授(政治学)は、審議会の答申内容を「常識的に考えて定数の半減はあり得ない」と話す。平井名誉教授は、議会の役割について「住民の多様な意見を討議を通じて自治体の決定に反映させていくことであり、定数が減れば住民の声は反映されにくくなる。定数は議会が担うべき仕事をきちんとこなせるかという観点から考えるべきだ」と指摘。その一方で、「議員は首長や行政に対して住民の視点でチェックしないといけない。その能力を発揮できているのかが問われる」と述べた。

県内の動向:定数削減と報酬引き上げの潮流

宮崎県内では、人口減少を背景に地方議会の定数を削減したり、報酬の引き上げで議員のなり手を確保しようとしたりする動きが進んでいる。例えば、えびの市議会(定数10)は昨年9月の市議選で定数が14から4減り、改選後の報酬は約10万円増となった。市議選立候補者は前回より1人増の17人となり、市は「報酬の引き上げも一因ではないか」と話す。日之影町議会(定数8)は4月から報酬が2万8000円増の24万円となる。椎葉村議会(定数10)は人口減少や村民アンケート結果を踏まえ、次期村議選から定数を1減らして9とする方針だ。

日向市のケースは、議会改革を巡る議論が複雑に絡み合い、大胆な提案が現実的な壁にぶつかる様子を浮き彫りにしている。審議会の活性化狙いが、条例の範囲や議会の自律性を巡る対立を招き、結果として白紙撤回に至った経緯は、地方自治の課題を象徴する事例と言えるだろう。