痴漢は「仕方ない」という空気を変えたい NPOが対策ハンドブック制作
痴漢は「仕方ない」空気変えたい NPOが対策ハンドブック

中高生向けの包括的性教育に取り組むNPO法人「SISTERS」(東京都新宿区)が、痴漢対策プロジェクト「#痴漢はみんなでなくすもの」を進めている。被害に遭う女子高校生さえもが「痴漢は仕方ない」と語ってしまう背景を探り、社会を変えようとしている。

出前授業で感じた違和感、女性のあきらめ

学校での出前授業で痴漢などの性暴力をイラストで示し、生徒にどんな気持ちになるかを尋ねたときのことだ。女性同士のグループでは「ぶっちゃけ痴漢はもう仕方ないよね」「ムカつくけど、よく遭うし」といった発言が聞こえてくる。

SISTERS代表理事の鈴木彩衣音さん(27)は違和感を覚えた。中高生たちは性暴力はダメだと知っている。なぜ、痴漢を「仕方ない」と思ってしまうのか。高校時代も、痴漢に遭った同級生が「しょっちゅうだから面倒くさくて警察にいかなかった」と言っていた。「10年たっても問題が変わっていない」

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友人や、現役の高校生に聞くと、「誰かに助けを求めても助けてもらえなかった」体験が「仕方ない」と思う背景にあった。教師に「スカートが短いからだろ」と言われるなど、被害を軽視する周囲の言動から、加害者が悪いのに「自分の責任なんだ」と思うようになったことも分かった。

周囲の人が行動してくれれば、止められる

逆に、周囲の手助けがあれば、痴漢は抑止しやすい。鈴木さんが注目するのは、東京都が2023年度から毎年続ける都内の痴漢の実態把握調査だ。電車内の痴漢被害で「周囲の人が行動してくれた場合、94.7%が止まる」(2025年度調査)という結果が出た。被害者は何もできなかった人が多く、被害者自身が何か対応した場合でも痴漢が止まったのは67.9%だった。

都によると、実態調査は警察が把握していない被害や目撃者の認識、行動も対象にしたウェブアンケート。被害経験があると答えた人は女性が54.3%、男性が15.1%などだった。

都は、周囲の人に行動を促す重要性に着目。痴漢の確証が持てなくても、被害者に席を譲るなどして加害者との距離を取る、自分の携帯電話をわざと鳴らすなどして被害現場の方を見る人を増やすといった行動も効果的だと説明する。

これらの情報も踏まえ、鈴木さんたちは目撃者にできる行動をスマートフォンで見られるようにまとめた「大人向けデジタルハンドブック」を作っている。

中高生向けには「自分を責めなくていい」明記

中高生向けの冊子型ハンドブックの配布も5月末から6月に開始予定だ。冊子の序盤では「あなたのからだは あなただけのもの」と、包括的性教育の考え方を伝える。被害者が自分を責めなくていいことも明記。その上で、被害に遭った友人への声のかけ方なども含めて対処法を載せる。

取り組みは共感を呼び、制作費などを募るクラウドファンディングに延べ337人から計237万円余りが寄せられた。

一方、20~40代の男性にも聞き取りし、「痴漢を見たことも考えたこともあまりなく、イメージがわかない」という働きかけのハードルが高い人たちがいる現状も知った。

それでも、鈴木さんは「時間はかかっても社会は必ず変わる」と考える。被害に遭いがちな若い女性だけで痴漢を無くすのは難しいから、年齢性別問わず、「みんなで無くすしかない問題かなと思っています」。

鈴木さんたちは中高生向け冊子の配布先になる学校を募集中。配布希望は、SISTERSのウェブサイトの「お問い合わせ」へ。

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