原子力事故が発生した際、人がどの程度の放射線を受けたのかを医療現場でどう見極めるのか、その実際はあまり知られていない。本稿では、特に血液検査による被ばく評価の方法について詳しく解説する。
対象とする被ばく状況
ここで扱うのは、福島第一原発事故のような環境放射線ではなく、数シーベルトに及ぶ極めて強い放射線を短時間に受けた場合である。日常で使われるマイクロシーベルト(マイクロは100万分の1)とは桁違いの線量だ。
リンパ球が示すサイン
こうした高線量被ばくの手がかりとなるのが、血液中のリンパ球である。リンパ球は放射線の影響を受けやすく、被ばく後に時間経過とともに減少することが知られている。健康な人のリンパ球数は1マイクロリットルあたり数千個だが、重い被ばくが疑われる場合、この数値は大きく低下する。
医療現場での評価手順
医療現場では、事故後できるだけ早く採血を行い、その後も繰り返し検査を実施する。特に被ばくから数時間から1日以内の変化が重要で、その後数日間にわたって経過を観察する。評価のポイントは一回の数値ではなく、「どのくらいの速さで減少するか」である。一般に、減少速度が速いほど、より高い線量の被ばくが疑われる。
血液の変化は、前回述べた体調変化が現れるまでの時間や事故の状況と合わせて総合的に評価される。緊急被ばく医療では、このように血液の変化を時間軸で追跡しながら、患者に必要な医療を判断していく。



