岐阜薬科大学の井上紳太郎特任教授(73)は、「香粧品健康学研究室」で、美と健康の関係を科学的に解き明かす研究を進めている。香粧品とは、化粧品に香りなどの付加価値を加えた業界用語である。井上特任教授は、未病の段階で状態を整え健康を保つことが香粧品の役割だと捉えている。未病とは、病気ではないものの体や心に不調がある状態を指す。医薬品が病気の治療を担うのに対し、香粧品は健康と病気の間で働きかける。
見かけ年齢と寿命の相関
井上特任教授によると、双子を長期間追跡した海外の研究では、見かけ年齢が若い人ほど長生きする傾向が確認されている。見かけ年齢は生物学的年齢とも相関があり、外見の老化は体の機能低下の表れである可能性があるという。見た目を左右する要素として、シワやシミ、肌ツヤ、姿勢、歩く速さなどが挙げられ、多くはスキンケアや生活習慣の改善によって改善できるとしている。
ヒアルロン酸の研究が鍵
研究の中核をなすのが皮膚のヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は水分を保ち肌のハリを支えるが、皮膚の奥では常に分解と再合成のサイクルを繰り返している。井上特任教授は、その分解に関わる因子を特定し、シワができやすい部分でその因子が増加することを明らかにした。さらに、ヒアルロン酸は分子の大きさによって機能が異なり、大きな分子は炎症を抑え、小さな分子は炎症を促進する。体内ではこれらのバランスが保たれており、その仕組みの解明が新たなスキンケアや治療法の開発につながる可能性がある。
白斑治療などへの応用
研究は、皮膚の一部の色素が失われて白くなる白斑の治療などにも応用されている。井上特任教授は「大学は原理を明らかにし、企業が応用して社会に広がる」と述べ、産学連携の重要性を強調する。
美を入り口にした好循環
「見た目が変わることで自信が生まれ、行動が変わり、健康につながる好循環が生まれる」と井上特任教授は語る。美を入り口にした研究は、人の生き方にも影響を与える可能性を秘めている。



