長野の秘境シェアハウスが満室続出 全国から集う若者たちのモラトリアム生活
長野秘境シェアハウス満室 全国から集う若者たち

長野県栄村の山奥にあるシェアハウス「とまりいえ」が、常に満室の状態を保っている。2026年4月22日、このシェアハウスを訪ねると、オーナーの佐藤慎平さん(31)と住人の男性2人が談笑する姿があった。冬には雪に閉ざされる渓谷に位置するこの場所は、非日常を求める人々の交流の場となっている。

秘境に佇むシェアハウスの実態

「とまりいえ」は、わずか4世帯の集落にあり、山と川に囲まれたまさに秘境と呼ぶにふさわしい環境にある。現在は4人が共同生活を送っており、耳に入るのは鳥のさえずりのみ。都会の喧騒を忘れさせる静けさが広がる。

低コストでの生活

家賃は光熱費込みで月約3万円という破格の安さ。食費などは入居者同士で折半する。近隣住民と野菜を交換することもあり、固定費を大幅に削減できる。入居者は貯金を切り崩したり、週に数回スキー場や農作業のアルバイトをして生計を立てている。

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多様な背景を持つ住人たち

住人の事情は実にさまざまだ。仕事を辞めて心の傷を癒やしに来る人、自分探しの旅の途中の人、執筆に集中したいライター、各地を転々として何度も短期滞在する人など、その目的は多岐にわたる。出身地も神奈川県や高知県など全国に広がり、過去には高校を卒業したばかりの女性も入居していた。

住人たちは農業バイトや山歩きを楽しんだり、気の向くままにのんびり過ごしたりと、普段はできない非日常を満喫している。仲の良い者同士で温泉巡りやスノーボードに出かけることもある。普段はそれぞれ個室で過ごし、交流スペースのローテーブルで親睦を深めている。

オーナーが語るシェアハウスの意義

佐藤さんは「都会の喧騒を離れると、やりたいことが見つかる。モラトリアム期間かな」とほほ笑む。実際、多くの人は3カ月から半年ほど滞在し、新しい自分を見つけてシェアハウスを出て行く。中には栄村を気に入り、地域おこし協力隊員として定住する人もいる。

住人の一人、角田元輝さん(25)は「地域の人も含めてみんなが優しく、助け合いで成り立っている。都会での疲れの癒やしになる」と笑顔を見せる。茨城県出身で、不動産会社勤務の経験を持つ角田さんは、テレアポで数字に追われ、「顧客に人としてではなく、機械的に関わる日々だった」と振り返る。精神がすり減ることもあったという。「ここの人たちは考え方も、人との関わり方も違うが、利害関係がなく友達以上、家族未満みたい。でも似たものを持っている」と話す。

開業の経緯と展望

栄村で「とまりいえ」が開業したのは2022年。佐藤さんは「どうせやるなら、中途半端な田舎でなく山奥で始めたほうが人は集まるだろう。でも本当に来る人はいるだろうか」と当初は不安を抱えていた。しかし、ふたを開けてみれば部屋は常に満室。より広い空き家を借り上げ、現在の場所に移転した。

シェアハウスを開いたきっかけは、埼玉大学在学中に農業バイトを経験し、「自給自足の生活っていいな」と思ったこと。イベント会社の内定を蹴って、栄村の地域おこし協力隊員になった。当時、和歌山県の山中のシェアハウスで共同生活をする「山奥ニート」が流行していた。

現在、佐藤さんは近くの自宅で妻や子どもと農業を営みながら、近隣に民泊を開こうと考えている。「自分たちで仕事を生み出し、シェアハウスの住人に回すことで自給自足できれば」と意気込んでいる。

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